大相撲九州場所(11月14日初日、福岡国際センター)で3場所ぶりの再入幕を確実にしている十両天空海(あくあ、30=立浪)が、先場所多用した「掛け投げ」への葛藤を語った。

27日、東京・台東区の部屋で相撲を取らず、基礎運動を中心に体を動かした。「1週間前」まで相撲を取っていたというが、持病の腰痛などを懸念して慎重に調整を進めているという。

西十両筆頭だった9月の秋場所は9勝6敗の成績で、そのうち4勝は豪快な「掛け投げ」でもぎ取った。柔道経験者の天空海にとって得意技になりつつあるが、「ちょっとやりすぎましたね」と苦笑い。先場所終盤は、相手に掛け投げを読まれる場面もあり、14日目からの2日間は大技にこだわらず「前に出よう」と心がけたという。

一方で豪快な技はファンや周囲も喜ぶ。「親方衆にも会う度に(掛け投げへの期待を)言われたりして…。できちゃうから狙っちゃう。今日もいけそうだと。来場所は狙わないように、体が動いて、自然と出れば」。一つの引き出しと考えれば、大きな武器になる。「助けられた部分があった。今まではああいうのダメだよ言われ、直せ直せ言われていた。あれもあれで武器というか。今度は狙ってみんな対処してくるじゃないですか。そのあとの違う、派生の攻め方ができればいいですね」と話した。

環境も大きく変わった。先場所前に入門時から過ごしてきた茨城・つくばみらい市の部屋が、東京・台東区の旧常盤山部屋に移転。日本相撲協会の外出制限が緩和されるこの時期は、自転車圏内の浅草に行くことも多い。「浅草メンチを買いに行ったときに、通りすがりのおばさんがいて、自転車こいでたら、ぱっと振り返って『天空海!』って言われました。あとは、駐車場の警備員みたいな2人組に言われたりしましたね」。「全然パンクしない」というブリヂストン社製の電動自転車に乗って、近隣の探索を楽しんでいる。

九州場所前の11月6日に31歳の誕生日を迎える。10年九州場所の初土俵以降、11月場所で負け越したことがない。「験がいい場所なんですよ。やっぱ九州は一番楽しいですね。けど(宿舎が)デリバリーも来ないんですよ、田舎なので。テークアウトはOKなので、買って帰ってこようかな」と、相撲も“食”もモチベーションは高まっている。