優勝争いで、全勝を1差で追う2人が明暗を分けた。1差をキープした力士の勢いと、2差に後退した実力者の心理面を、協会トップの八角理事長(元横綱北勝海)が読み解いた。

平幕下位で返り入幕の阿炎(27=錣山)は、この日も突き押し一辺倒の会心の相撲で、翔猿(29=追手風)を懐に飛び込ませず9勝目。「思い切って行った。迷いがないね。絶対に押し出すんだという。押し勝ってやるんだという気力がいい」と八角理事長は、阿炎の精神面の充実ぶりを褒めた。残り5日の土俵にも「乗ってくると力を出すタイプだから楽しみ。これから成績のいい人と当たるわけですから」と期待を込めて話した。

一方、宝富士(34=伊勢ケ浜)相手に、左四つの体勢から動きがピタリと止まり、右の上手がとれないままアッサリと寄り切られた関脇御嶽海(28=出羽海)については「負け方が残念。全く力が出ていないし、気持ちが乗っている時と乗っていない時の差が激しい」と、2敗目を喫したこと以上に、その内容を残念そうに指摘した。その原因について、かねて御嶽海に指摘されているように「やっぱり気持ちでしょう。気持ちが疲れてくると気合が乗らない。そういう意味で体力がない。稽古でも疲れたら休む。疲れても我慢すれば(本場所の)15日間の気持ちを鍛えられる。『よし、やってやろう』という気持ちがないから、ずっと三役に甘んじている。もう少し欲を出して『何が何でも(大関に)上がってやるぞ』となれ、とっくに(大関に)上がっている。性格なのかな。歯がゆい」と期待すればこその苦言を呈していた。