御嶽海が白星を2ケタに乗せましたが、ガッカリさせられたのは相手の正代の相撲です。四つに組んで左上手も取っているのに何も出来ない。本来なら十分な体勢なのに、そこから攻めない、動けない、何もしようとしない。自分の相撲にすっかり自信を失ってしまったように見えます。あるいは貴景勝が早々に休場したから、残る大関として休むに休めないケガを抱えているのかとさえ思ってしまいます。何とか気力を振り絞ってほしいところです。

正代がそんな状態ですから、大関を狙う御嶽海とすれば絶対に落とせない一番でした。さらに前日10日目に初黒星を喫しています。連敗でもすれば、また精神的にムラのある以前の御嶽海に戻ってしまったという印象を与えかねません。いろいろな意味で大きな10勝目でした。内容的にも、押し切れなくても左からおっつけながら上手を引いて、腰を落として前に出る落ち着いたものでした。幕内で2回優勝してとっくに大関に上がっていないといけない力士ですから、これが最後のチャンスと思ってやってほしい。そうでないと期待する方が疲れます。優勝争いは並走する照ノ富士が実質、星2つリードと見ます。優勝うんぬんでなく御嶽海には13勝して来場所につなげることを求めます。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)