千秋楽が本当に面白くなりました。何より殊勲は阿炎です。この日も手がよく伸びていました。先場所よりさらに良くなったのは立ち合い、もろ手で突いた後の二の矢、三の矢の攻めです。頭で当たるなど工夫があり、この日は左ののど輪が決め手でした。これで横綱の体を横に向かせた。威力満点でした。

横綱に負ければ消えていた優勝の可能性も他力ながら出てきました。一方、照ノ富士は膝の状態からして踏ん張れず、千秋楽が不安です。12日目の明生戦の黒星が痛かったでしょう。その前に御嶽海が負けて勝てば単独トップに立つ一番で少し欲が出たのではないでしょうか。

御嶽海は最終盤でも落ち着いていました。重心を前にした、丸い体を生かした相撲でした。何より足の運びがいい。必ず左右を交互に出し、その歩幅も小さいすり足で、これは攻められて下がる時も同じだから安定感があります。御嶽海には引退するまで、この相撲を忘れないで大関、そして横綱に駆け上がってほしいものです。千秋楽の照ノ富士戦も体を生かし、この日阿炎が見せたように立ち合いから攻め込むことです。膝に不安のある照ノ富士は正面に御嶽海を置いて前に出るだろうから、力勝負が期待されます。もし照ノ富士が勝って優勝決定ともえ戦に持ち込まれた場合は、阿炎と琴ノ若の勝者に優勝の可能性があると思います。御嶽海は1日何番の相撲ではないし、横綱の意地があっても照ノ富士には膝の不安が残ります。スタミナ面を考えても若い2人に有利に働くのではと思います。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)