大相撲春場所(13日初日、エディオンアリーナ大阪)まで残り4日となった9日、西前頭3枚目の明生(26=立浪)が、大阪市内での朝稽古終了後、報道陣の電話取材に応じ、近況や春場所に臨む胸中などを明かした。

春場所の番付で幕内力士42人中、半数が2月までに新型コロナウイルスに感染していることが確認されている。明生も2月上旬に感染が判明。40度近い発熱が2日ほどあったという。その後は、都内の自宅で10日間の隔離期間があり、体は動かせなかった。ただ、それを明生はプラスにとらえた。食欲はあり体重減も最小限にとどめられ、さらに「腰もケガをしていて、それを治そうという時期だったので、そこまで神経質な感じはなく、ユックリ休もうという時期だった」と精神的にも冷静に対処できた。

昨年7月の名古屋場所で新三役。それから4場所、在位していた三役の座も、先場所は横綱、大関戦で3戦全勝ながら5勝10敗と大きく負け越して滑り落ちた。さらに部屋頭の座も、弟弟子で新三役の小結に昇進した豊昇龍(22)に譲り渡す形となった。現在の稽古で意識する「頭を上げないように、しっかり低い攻め」は先場所の反省を踏まえてのもの。「自分の実力が足りなかった」と現状を認識しつつ「でも、無駄ではないかなと思ってやっている。場所前にケガをしたことで調整の仕方とか、自分の体のことをすごい学べた。本場所でも横綱、大関に勝つことができたので、そこは全部、収穫かなと思っています」と、ここでも前向きだ。番付で豊昇龍に抜かれたことも「悔しい気持ちも持ちつつやってますね」と現実を受け止めながら「発奮材」というプラスにしようとしている。

もちろん三役返り咲きの闘志も心に秘める。「落ちたら、また上がればいいというか、また1歩ずつ上を目指して、やっぱり横綱、大関を倒して盛り上げられたらいいなと思います」。この1年間で横綱、大関戦は8勝11敗(不戦は除く)と上位キラーぶりを示してきた。新小結昇進時に、大関を目指す力をつけたいと語っていた抱負は「しっかり、はね返されました。2ケタ勝つのは、すごい難しい。今の自分では勝ち越すのも精いっぱいな感じ。(今は)2ケタ勝てるように力をつけていきたい」と現実も、しっかり認識している。そのためには「バランスというか、立ち合いの鋭さだったり、土俵際で逆転されることも多いので、しっかり残せるように」と課題を挙げた。

2011年3月の東日本大震災から11日で11年。明生はその3月の春場所の新弟子検査を受けたものの、本場所は中止に。前相撲に臨んだ翌5月の夏場所は八百長問題で角界が揺れ、技量審査場所として開催された激動の時期だった。その頃を思い返し「本当に大変な時期に入門したな、と思いました。入門する場所もなくなってしまったし、やっぱり相撲界に入るのは、やめておこうかなとか思った。(最終的には)相撲が好きで力士になりたいと、ずっと思っていて、そこが勝った」と振り返る。

だから悔いのない相撲人生を歩みたい。ここまでの道のりは「たぶん順調には行ってないというか、遠回りしながら行くのが、たぶん自分の感じだと思う。それはそれで、いろいろ学べているので、いいかなと思います。1歩ずつ進んでいます」。酸いも甘いも味わった経験を糧に、再び大関を目指す。