久しぶりに高安らしい相撲を見た気がします。相手を下から突き上げるような突っ張りです。威力が相手に伝わるから、今場所は勝負をつける時間が短いのもいいですね。悪い時の高安は、長い相撲の中から勝機を見つけていました。ベテランのやり方として、それはそれでアリですが年齢的なことを考えれば、今場所のような速い相撲でリズムに乗る方がいいと思います。やはり長い相撲は疲れがたまり、後半戦に響いてきます。

優勝争いのことはまだ考えていないと思います。それより、まずは勝ち越し。その緊張はあると思いますが萎縮しないことです。ただ相手は元気な若元春。前頭7枚目と9枚目の対戦ですが、お客さんも喜ぶ8日目屈指の好カードです。同じ左四つですが自信を持って引きつけて前に出る若元春の力は相当なもので、まわしを切るのもうまい。まわしを取っての攻防なら若元春有利とみます。高安からすれば、この日の北勝富士戦のような相撲が望ましいでしょう。大関陥落という、つらい経験もして苦労しながら、いろいろ考えて相撲を追っている高安には、1回は優勝してほしいというファンも多いでしょう。ぜひ、その期待に応えてほしいと思います。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)