大関経験者で西十両12枚目の朝乃山(28=高砂)が、初日から負けなしの7連勝で、勝ち越しに王手をかけた。西十両11枚目の島津海(26=放駒)をすくい投げで下した。十両ではただ1人、勝ちっぱなしを続けている。「勝ち越しで終わりじゃない」と満足することなく、「また、明日から自分の相撲を取りたい」と気を引き締めた。

「島津海関は僕が謹慎の時から見ていました。まわしを取れず、もろ差しになるときつい」と相手の攻めを警戒しながら、立ち合いでしっかり踏み込んで左の上手を取った。得意の右四つを作り、土俵際まで押し込んだ。そこは仕留めきれなかったが攻め手を緩めることなく、巻き替えにいったところで体勢を崩した島津海が腰から崩れた。土俵下で審判を務めた師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)の目の前で7勝目を挙げ「勝ち姿を見せて恩返しをしたい気持ちだった」と振り返った。

朝乃山は初日に貴健斗(常盤山)を下し、関取として599日ぶりの白星を挙げた。大関だった21年5月19日の夏場所11日目(隆の勝をすくい投げで退けた)以来となる勝利で、再十両を果たした場所で好スタートを切った。続く2日目の千代栄(九重)、3日目に白鷹山(高田川)、4日目に對馬洋(つしまなだ、境川)、5日目に魁勝(浅香山)を下し、序盤戦を5戦全勝。そして、中盤戦に入った6日目に狼雅(二子山)を撃破して単独トップに躍り出た。

「15日間相撲を取れることへの感謝を忘れない」との気持ちを持ちながら土俵に上がり、新しい顔ぶれがひしめく十両でも大関経験者としての実力を見せつけている。いまだ手にしたことがない十両優勝へ。「しっかり、どっしりと構えて相撲を取っていきたい」とこの勢いのまま、白星を積み重ねる。