静岡出身力士初の幕内最高優勝なるか。西前頭5枚目の翠富士(26=伊勢ケ浜)が、同7枚目高安との「全勝対決」を制して7連勝で単独トップに立った。

体重差60キロをものともせず、力強い相撲で突き落とした。静岡県出身力士初の優勝を目指し、「荒れる春場所」の主役に躍り出る。小結大栄翔も1敗に後退し、大混戦ムードが漂ってきた。

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怖いものなしの勢いが、高安をのみ込んだ。「自分は小さいから、下から当たっていく意識を持ってます」。翠富士は60キロの体重差も恐れず真っすぐぶち当たり、強烈な右おっつけから最後は突き落としを決めた。

昨年秋場所での前回対戦では圧力に負けて「引いてしまった」。相手は立ち合いのかち上げを得意にするが「(部屋の)横綱(照ノ富士)の圧力がすごいんで。怖くはない」と言い放つ。主導権を掌握しての快勝に「悪くなかったと思う」と表情を緩ませた。

その後の土俵で、同じく全勝だった大栄翔に土がつき、単独トップに立った。大関貴景勝の休場で昭和以降初の横綱、大関不在の異常事態。「荒れる春場所」の主役は混沌(こんとん)状態だ。静岡県出身力士で幕内優勝はいない。「できればそうなりたいですね。常に優勝したいと思っているけど、そううまくはいかないんで」と笑った。

部屋では休場中の照ノ富士がいじってくる。「横綱から『ワンチャンあるぞ』。でも『たぶん無理だけど、ハッハッハ』って」。部屋の明るい空気も小兵の快進撃を後押しする。「バーッと負けるかもしれないけど、続けられるよう頑張りたい」。春の珍事で終わらせない。【実藤健一】