日本相撲協会は29日、エディオンアリーナ大阪で大相撲夏場所(5月14日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議を開き、藤青雲(25=藤島)と時疾風(26=時津風)の新十両2人を含む十両昇進力士3人を発表した。再十両は2場所ぶりに復帰の千代栄(32=九重)だけだった。

宮城県栗原市出身の時疾風は、東日本大震災の被災者への思いを背負う。12年前の3月11日、(本名)冨栄少年は翌日に中学の卒業式を控えて準備している最中だった。自宅は「あらゆるものが倒れて電気、水道が1カ月ダメだった」。それ以上に変わり果てたなじみの風景が心に刺さった。

「震災後、しばらくしてそれまでよく行っていた海岸地域に行ったら、何もなくなって更地になっていた。中学生ながら(被災者を)元気づけられるかな。テレビに出るようになれば元気づけられるかと。(大相撲を目指すきっかけに)なりましたね」

教職の選択肢もあったというが、夢と地元の復興への思いが後押しして大相撲の世界へ進んだ。19年春場所で初土俵を踏み、4年をかけて吉報を手にした。「うれしいです。ドキドキもあり、ここからだという気持ちです」と言った。

左四つ、右上手の得意を持つが、課題は「体格」になる。入門当初は115キロほどで、今場所は130キロまで増やした。当面の目標は140キロだが、「食が細い。頑張って食べます」と言った。

師匠の時津風親方(元幕内土佐豊)は「みんなの見本になる力士になってほしい。今の左四つ、右上手を磨いていけば上を目指せる」と期待する。時疾風は「津波で被害にあった地域を見にいって現状を見た。地元に恩返ししたい思い。頑張ります。(今後の目標は)まず幕内ですね。自分の相撲とって白星を重ねていきたいです」と気合十分に話した。