大相撲で幕内優勝1度、最高位関脇の逸ノ城(30=湊)が電撃引退した。4日、師匠の湊親方(元前頭湊富士)が日本相撲協会に引退届を提出し、同協会から現役引退が発表された。

同親方は引退理由について慢性化した腰痛を挙げ、「寂しい気持ちはありますけど、仕方がない。教えることは全て教えましたし、(逸ノ城については)やり切った気持ちがあります」と述べた。

同親方によると、夏場所(14日初日、東京両国国技館)の番付発表翌日の2日に話し合い、結論を出した。「話し合った際に何度も止めたんですが、本人の意思が固かった。腰が痛いということで、仕方がない」と気遣った。

入門から10年。「怪物」とも称された大器との一番の思い出について、逸ノ城が新関脇に座った14年九州場所の前に、福岡・古賀市の湊部屋宿舎で初めてのちょんまげ姿を披露したことを挙げた。同親方は「たくさんの報道陣が駆けつけてくれました」と懐かしみ、昨年7月の名古屋場所で初優勝を飾ったことについては「部屋としては初めての幕内優勝ですから、うれしかったです。いろいろなものが込み上げてきました」と遠くを見つめた。

モンゴル出身の逸ノ城は日本国籍を取得しているが、年寄名跡を取得していない。親方として残ることができず、同協会を離れることになる。

引退後の生活や進路について、逸ノ城からいまだ相談、報告はない。大きな決断を下した弟子の今後の人生を案じながら、「自分の信念を貫くことは、力士を引退してからも大事なこと。一番の敵は自分自身。自分に勝てば、どんな相手にも負けない」。部屋頭を長年務めた男の引退によって若い衆に動揺が広がらないかと心配しながら、「いつまで引きずっていてもしょうがない」と前を向いた。