大相撲の元関脇逸ノ城の三浦駿さん(たかし、30)の突然の引退発表から一夜明けた5日、2010年に故郷モンゴルから同じ飛行機で来日した平幕の水戸龍(29=錦戸)が旧友の電撃引退を惜しんだ。出稽古に訪れた木瀬部屋で取材に応じ、「巡業あたりから連絡も取れなくなって、引退もニュースで知りました。辞めると知った時にはうるっとなったし、本当に切ないです」と落胆した。

10年3月に三浦さん、横綱照ノ富士と共に来日し、そろって鳥取城北高に相撲留学。三浦さんとは、互いに「イチコ(国籍取得前のアルタンホヤグ・イチンノロブから)」、「トゥル(本名のバーサンスレン・トゥルボルドから)」と呼び合う仲だった。苦楽を共にした旧友との一番の思い出は同校の相撲部で稽古していた時だ。「入ったばかりのイチコが女子部員にすら勝てなくて、コーチや監督に怒られて泣いていたんです。慰めて元気づけたら次の日にはがらっと変わって、今度は誰にも負けなくなった」。“怪物”と呼ばれる強さの片りんを見せたと驚いた。

照ノ富士を含めた3人の関係について、水戸龍は「みんなにはない絆があります」ときっぱり。「同じ飛行機で来ましたし、同じ屋根の下で生活したし、相撲もやってきましたので」と誇らしそうに言った。4日の会見で引退後の相撲との関わりについても未定と言った三浦さんだが、水戸龍は「アイツは相撲を嫌いになることはないですよ」。そして「落ち着いたら、また連絡してきてほしいですね」と旧友との再会を心待ちにした。【平山連】

○…三浦さんが引退理由にも挙げた腰痛の深刻化は、水戸龍にとっても同じ悩みだ。現役時代にはお互いに腰の治療についての話題で情報交換するのもしばしばあったという。この日は申し合い稽古に参加し、宇良や金峰山を相手に5勝6敗。部屋に稽古相手がいない中で実戦感覚を取り戻そうと必死だが、やはり今も腰の痛みと戦う日々は続く。「もっと低く当たるとか、前に出るとか、立ち合いで当たっていくとかやりたいんだけど…」と理想とのギャップに悩む。三浦さんが角界を離れたことで、夏場所(14日初日、東京・両国国技館)の出場予定の関取衆の中では最重量(199キロ)になった。「けがをしないことが大事」と場所に向けた思いは控えめ。2場所連続の勝ち越しが期待される。