大関経験者で東十両5枚目の栃ノ心(35=春日野)が、引退届を提出、受理されたことを受けて、師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)同席で会見を行った。

2人で会見場に姿を現すと、最初に春日野親方が「長年にわたり、頑張ってきましたが、ケガもあり、非常に苦しい場所で決断致しました」と説明。続いて栃ノ心が「2023年5月19日、引退することを決めました。ここまで皆さん、ありがとうございました」と述べた。

栃ノ心は今場所5日目まで5連敗で、未勝利のまま序盤戦を終えていた。かつて「怪力」でならした、ジョージア出身の大関経験者だが、初場所4日目に左肩を脱臼し、途中休場。十両に陥落した春場所は5勝10敗と、徐々に番付を下げていた。栃ノ心は「1月場所でケガして、そこから自分の相撲が取れなくなった。今場所も乗り越えられると信じていたけど、自分の相撲を取れず、力も出なくなった。相撲を取るのが怖くなりました。それとお客さん、ファンの皆さんに、こんな相撲を見せるのは恥ずかしいと思いました。あと2、3年は取れるんじゃないかと信じて、今場所を迎えましたが、残念です」と、絞り出すように話した。

左腕に思うように力が入らず、生命線の左上手を引けずに、今場所は苦しい内容の相撲が続いていた。春日野親方は「(左腕は)かなり悪かったのは確か。場所前に(相撲を取る稽古を)『ちょっとやってみろ』と言いました。どういう角度でまわしを取って、どういう角度で引きつけたら、まだいけるのか確かめようと、やらせましたけど、どういう格好になっても痛いということだった」と、説明した。同親方は「正直、ダメかなとは思っていました。5日目ぐらいが1つのヤマと思っていた」と打ち明けた。さらに「あまり痛いとは言わず、我慢する方ですが(左肩脱臼が)致命傷になったのは確かです」と続けた。栃ノ心も「あまり力が入らず、前みたいな相撲が取れなくなった」と話していた。