関脇で大関昇進を確実にした霧馬山(27=陸奥)がモンゴル出身として6人目の大関昇進を目前にした。3回連載「“新大関”霧馬山の心・技・体」で素顔に迫る。第1回「心」では、稽古熱心さと若い衆から慕われる情深い面を紹介する。

エゼン ヒチェベル ザヤヒチェヌ-。大関昇進を確実にした霧馬山の好きなモンゴル語の言葉で、「努力は裏切らない」「自分が頑張れば運がついてくる」といった意味だ。他の関取がいない環境でも出稽古を重ねて鍛錬を怠らず、まさにその言葉どおりの成果を出した。新関脇の春場所は12勝3敗で初優勝を飾り、大関昇進をかけた夏場所でも11勝を挙げた。見事に大関とりに成功した。

首都ウランバートルから約700キロ離れたドルノドゥ生まれ。16歳ごろまでゲル(移動式住居)で暮らす遊牧民生活を送り、日常的に馬に乗り、井戸水をくむため何度も往復する日々により自然とスタミナと強い足腰がついた。日本に来るまで相撲経験はなかったが、師匠の陸奥親方(元大関霧島)が素質を見抜き翌15年1月に正式入門。8年半で角界の顔を張る地位に上り詰めた。

性格は至って穏やかで、情が深い面もある。付け人を務める三段目の安西は「本当に優しくて、温かいんです」と感謝。今場所前に部屋の元兄弟子からの暴力被害に遭っていたことを週刊誌に実名で告発し、世間からの注目が増した。緊張感が高まる状況を察してか、兄弟子から「お前悪くないんだから、堂々としていけ」と場所前に言われたことが救いになって平常心を取り戻した。2勝5敗で負け越しと悔しい結果に終わり、「あんなにプレッシャーがかかる中で、霧馬山関はちゃんと結果も残してる。かっこいいな」。

大関昇進を確実にしている男は、ただ強いだけではない。周囲に気を配れる優しさも兼ね備え、土俵で結果を残してきた。【平山連】