大相撲の大関豊昇龍(24=立浪)が、原点回帰の三番稽古で、九州場所(11月12日初日、福岡国際センター)に向けて、早くもギアを上げた。9日、神奈川・伊勢原市で行われた秋巡業の朝稽古で、同期の前頭王鵬(23=大嶽)と連続8番取って5勝3敗。さらに関脇若元春と1番、前頭湘南乃海と3番取って4連勝し、幕内力士では最多の計12番で9勝3敗と、好内容で会場を盛り上げた。さらに、ぶつかり稽古では湘南乃海に胸を出し、自らは大関経験者の前頭朝乃山に胸を借りるなど、精力的に稽古を積んだ。

関取衆の申し合いの大トリとして、王鵬が前頭平戸海を破ったところで土俵に入った。最初の相撲は「アップをしていなかったから吹っ飛ばされちゃったな」と、豪快に土俵下まで押し出された。次の相撲も押し出されると、負けず嫌いの性格に火が付いた。鋭い立ち合いから3連勝。王鵬の引きに対応しきれず、さらに1敗すると、立て続けに寄り切って2連勝で、若元春に指名を替えた。

初土俵の前から、自身は「朝青龍のおい」、王鵬は「大鵬の孫」と、大横綱の血縁者として注目を浴びていた。初土俵の前相撲、続く序ノ口の土俵で連敗。当時から「ライバル」と公言し、常に意識する存在だった。だからこそ、この日の王鵬との稽古を「押しがあるし、体がデカい。何よりも同期だから。(相撲)教習所で相撲を取っていたことを思い出す。負けたくないというのはある。(5勝3敗で)ギリギリ勝ち越せたけど、稽古が足りないな。途中からは動きも良くなって、いい相撲を取れた」と、充実感に満ちた表情で振り返った。強くなりたいと、がむしゃらに稽古していた新弟子時代を思い出させ、自然と心身のギアが上がった格好だ。

7日に甲府市で行われた巡業では、3大関では一番乗りで相撲を取る稽古を再開し、計8番で5勝3敗だった。巡業が行われなかった中1日を挟み、番数も内容も上向き。新大関だった9月の秋場所は、7勝7敗で迎えた千秋楽に勝って、辛うじて勝ち越しを決め、来場所のかど番を回避した。ただ、満足にはほど遠い結果。「2桁勝って、優勝争いに入りたかった。何か足りなかった。それが稽古だった。来場所は、しっかり稽古して大勝ちしたい。情けない姿を見せないようにしたい」。大関に昇進してから初めて胸を合わせた王鵬との三番稽古で初心に立ち返り、一段と稽古への意欲をみなぎらせていた。