護送車が襲撃され、大勢の凶悪犯が脱走する。彼らを捕まえるための緊急対策として、収監中の犯罪者の中から「適任者」が集められ、特殊プロジェクトが立ち上がる。報酬は減刑。毒をもって毒を制す手法は「スーサイド・スクワッド」(16年)をほうふつとさせる。

9日公開の「ザ・バッド・ガイズ」は、DCコミックの異色作を現実世界に移し替えたような作品だ。

主演は「犯罪都市」(17年)や「守護教師」(18年)ですっかりおなじみになった「体格俳優」マ・ドンソク。かつて拳ひとつで裏社会を牛耳ったというコミックばりの設定も、強烈な個性によって現実味を帯びる。

チームの頭脳となる知能犯役には「カンナさん大成功です!」(06年)で自在な演技を見せたキム・アジュン。ずる賢いけど憎めない。冷酷に見えながら実は人情家という、危うい二面性でハラハラさせる。

一本気がたたって暴力事件を起こした元エリート刑事役には、日本で言えば竹内涼真のような位置にいるチャン・ギヨンがふんし、ドンソクとの好対照でバランスを取る。

そして彼らをまとめる元捜査官には報道番組の司会も務めるベテランのキム・サンジュン。水と油のような3人が、この元捜査官によってまとめられ、終盤に向けてワンチームとなっていく。

脱走犯の「捕獲作業」が進行するに従って、裏側には警察上層部や日本のヤクザの暗躍が見え隠れし、4人で立ち向かうにはあまりの巨悪が浮かび上がる。

時代劇でいえば千人斬りのようなクライマックスで、まるでマンガの設定がマンガにならないのは、ドンソクの表情が真に迫っていて拳の痛みが伝わってくるからだろう。

「鬼はさまよう」(15年)のソン・ヨンホ監督は、アクションシーンをリアルに見せるために、残りの2人の個性も明確にした。アジュンはしなやかに、ギヨンは直線的に強敵に立ち向かう。2人は撮影前にアクションスクールに通い、ワイヤアクションまできっちりマスターしたという。

しかめっ面にも味のあるドンソクはやっぱり他にないキャラクターだ。この秋に公開されるマーベル作品「エターナルズ」の主要キャストに抜てきされたのも当然だろう。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)