広瀬すずふんする探偵助手は、毎回終盤に天才的なひらめきで事件を解決する。

独特のカンフーポーズから瞑想(めいそう)するように自身の記憶を振り返り、真相を言い当てる。このやや緩めのアクションと「入りまーす」という決めゼリフにハマり、一昨年4月の日本テレビ系ドラマ「ネメシス」は全10話を視聴した。

広瀬演じる美神アンナの出生にまつわる20年前の事件を通しのテーマにしながら、これに絡むように起こる事件を1話完結で見せる構成で、「探偵物語」や「あぶない刑事」といった往年の名作ドラマのテイストをこれまた緩くまぶした雰囲気も楽しめた。

テレビシリーズを総監督した入江悠氏がメガホンを取り、「アンフェア」シリーズの作家、秦建日子氏が脚本を書いた「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」(31日公開)は、ドラマの雰囲気を踏襲しながら映像的なトリックをふんだんに仕掛けて見応えがあった。

数々の事件を解決して、順調に見えた探偵事務所ネメシスだが、突然依頼が絶えて社長の栗田(江口洋介)は気をもみ始める。一方、アパートを借りて自立したアンナは、毎夜仲間たちが悲惨な死を遂げる夢を見るようになる。名コンビの探偵風真(櫻井翔)も怪しげな行動を取り始める。

そんなある日、アンナの前に窓と名乗る男(佐藤浩市)が現れ「私の言うこと聞かなければ、悪夢は1つ1つ現実になる」と要求を突きつけて…。

今回もアンナの出生の秘密がカギとなり、仲間たちとの関係性がいい具合におさらいされるので、シリーズ初見の人でもそれほど無理なく独特の世界観に誘われるはずだ。一方で、窓の目的は何なのか。風真は本当に裏切り者なのか。そうでなければ誰が…と謎解きは重層構造になっていて気が抜けない。

白髪オールバックの佐藤浩市は「脚本の段階ではあがりがまったく予測できない作品でした」と振り返っているが、「異世界の住人」になりきった含みのある表情、セリフ回しはさすがだ。そんな佐藤に当たり前のように絡む広瀬の芝居勘にも改めて感服する。

今回も「入りまーす」を思いっきり楽しめた。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)