主人公の私立探偵はどこまで敏腕なんだ、というくらい目端が利くし、女性検事はどこまでも突き進む怖いもの知らず。そして敵役の大手法律事務所社長はどこまでも憎らしい極め付きのワルだ。

「ジェントルマン」(2月9日公開)の登場人物はいずれもクセが強い。演じるのは、ファンタジー作品が多かったチュ・ジフン、演劇出身らしくメリハリを効かせるチェ・ソンウン、名バイプレーヤーのパク・ソンウンで、目いっぱい楽しめるエンタメ作品に仕上がっている。

「100%解決」が売り文句の探偵事務所社長ヒョンスは、犬を探しに依頼人の女性とペンションに向かっている。何でもない案件と思われたが、現場で謎の男に襲われたヒョンスは気を失い、女性は行方不明。気が付くと誘拐事件の容疑者にされていた。

が、ひょんなことから警察官に担当検事と勘違いされ、なりすましたまま自分の容疑を晴らすために「捜査」を始める。そこに乗り込んできたのが正義を貫く余り、検察内の闇に踏み込んで地方に飛ばされた「イカレ女」ことファジン検事で、彼女は誘拐事件の裏に検察の闇を操る大手法律事務所のドフン社長の影を感じている。

ヒョンスとファジン検事は、対立を繰り返しながらも巨悪を倒すために共闘するが…。

あり得ない「なりすまし」も、ジフンがひょうひょうと演じると、さもありなんと見えてくる。宝塚の男役のように振る舞うチェ・ソンウンはほれぼれするほど魅力的だ。そして、ソックスのはき方まできめ細かく役作りしているパク・ソンウンは嫌な男になりきっている。

ヒョンス率いる探偵チームには個性派が集い、そこには巨悪と対決できるだけのスキルと機材がそろっている。一探偵事務所になぜここまで、とは思うが、この設定があってこそ、巨悪とのつばぜり合いがスリリングに見えてくる。

終盤は、実は、実はと裏の真相が明らかになるどんでん返しの連続にうならされる。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)