ウイルスによる突然変異で高度な知能を得た猿たちと人類の戦いを描く「猿の惑星」の新シリーズの第3作。ついに両者の攻防が歴史的な瞬間を迎える。

 猿と人類が全面戦争に突入してから2年後。猿たちを率いるリーダーのシーザー(アンディ・サーキス)は森の奥深くに秘密基地を築いて身を潜めていた。ある晩、人類側の軍隊を率いる冷酷非情な大佐(ウディ・ハレルソン)の兵に奇襲を受け、シーザーは妻子を殺される。シーザーの目にたたえられた悲しみが、じわりと胸に染み入った。

 物語は現代社会も投影する。猿たちは戦争を避けたいのに、人間たちは異質なモノを排除しようと、攻めてくる。「アメリカ・ファースト」を掲げ、扇情的に人種差別発言を繰り返す米国のリーダー。人間との共存を願うシーザーのリーダー像とは対照的だ。

 家族を奪われた後にシーザーがとった行動には目を見張った。まず仲間たちを新たな隠れ家へ向かわせ、自らは数頭の仲間と大佐を追う。仲間への強い思いは人間よりも人間らしい。リーダーとは? その資質について考えさせられた。【松浦隆司】

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