会えなくなった初恋の人との再会、高校生の恋愛模様、音楽、バンドなどなど、青春要素満載の作品だ。

 覆面バンドのボーカルを演じた主演の中条あやみの、伸びやかでパワフルな声と、眼帯をしていても隠せない強い目が、甘すぎない作品にしている。驚きは、中条の歌うシーンの超ドアップの美しいこと。何度か出てくるが、バラードではなく、アップテンポの曲の場面がいい。カメラを見すえて歌うのは相当難しいはず。力強さだけではない。ほんのちょっと切ない表情が、物語の背景を十分に伝えてくれる。

 少女コミック原作だけに、胸キュン(すでに死語らしいが)的な言葉が、これでもかというほど出てくるが、主人公と初恋の相手との心のすれ違いは、心情を言葉で説明しすぎていないのがいい。こういうもどかしさこそが、胸キュン(あえて使います)じゃないか、と思う。

 音楽監修は、ロックバンドMAN WITH A MISSION。エンディング曲は、劇中で歌われなかった曲として登場するもの。予想に反して、かなり骨太な曲で、やっぱりこの映画、ただの胸キュンじゃなかった。【小林千穂】

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