亡くなった身内のことを思い出したり、訃報に接することが多い時期に見た。やや沈んでいた気持ちでいたが、ものすごく希望を感じた。日本のお盆に似た、メキシコの風習である死者の日、少年ミゲルが死者の国に行ってしまう物語。死をテーマにした作品に希望を感じたというのもなんだが、確かにそうだった。

 音楽少年のミゲルは、家族のおきてで靴職人になることを厳命されている。音楽コンテストに出るため、地元のスターのお墓に忍び込んでギターをお借りしようとしたら死者の国に…という発端。

 極彩色で蛍光色に彩られた、ド派手な死者の国で繰り広げられるミゲルと相棒へクターの冒険。冒険そのものの面白さと同時に、死者の国で先祖に会い、自分が自分だけの足で立っているのではないと実感するミゲルの成長物語に涙し、自分も誰かとつながってここにいるのだと思って涙した。別れた人にいつかあの国で会えることを明るく描いてくれて、また涙した。

 アカデミー賞長編アニメ賞、主題歌「リメンバー・ミー」が歌曲賞を受賞した。【小林千穂】

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