スウェーデンの気鋭、リューベン・オストルンド監督による風刺劇。あまり直視したくない心の一番嫌な部分を毒気たっぷりのユーモアで突いてくる。利己的とは? 偏見とは? 思いやりとは? 独特のカメラワークとともに淡々と問いかけてくる。

 主人公クリスティアン(クレス・バング)は現代美術館の展示で企画や運営の中心的役割を担う敏腕キュレーター。次の展覧会ですべての人が公平に扱われる「思いやりの聖域」をテーマにした参加型アート「ザ・スクエア」という地面に正方形を描いた作品を展示することを発表する。現代社会に、はびこるエゴイズムや貧富の格差に一石を投じる狙いがあった。

 ある日、街で女性を助け、その際にスマホと財布を盗まれてしまう。いいことをしたはずなのにスリ被害。怒ったクリスティアンが取った行動が思わぬ波紋を呼び、エリート人生が暗転していく。ちょっとした行動が裏目に出て負のスパイラルが始まる。人ごととは思えない。17年のカンヌ国際映画祭の最高賞・パルムドール受賞作。徐々に居心地が悪くなる映画だが、引きずり込まれ、逃げ出せなくなった。【松浦隆司】

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