戦艦大和の最後を見せる冒頭から引き込まれる。乗組員の恐怖や驚きといった細かい表情、動きを丁寧に、大胆に見せる。大きな1つの事象に、たくさんの命があることを強烈に感じさせるシークエンスだ。迫力のある映像が、この事実を突きつけてくる。ぎゅっと心が痛くなった。

冒頭より10年以上前。海軍内は、巨大戦艦を造りたい派と、実用重視の船を造る派に分かれていた。天才的な数学の才能を持つ元帝大生、菅田将暉演じる櫂直(かい・ただし)は、戦艦不要派の山本五十六(舘ひろし)永野修身(国村隼)に請われ、日本の経済破綻を招きかねない戦艦にかかるコストを計算する。造りたい派が出してきたコストは明らかに低く、虚偽を暴くという筋も並行して描かれる。

ネジ1本の原価から、人件費、工期までを出さないと計算できないコスト。櫂の、コツコツかつ、超人的で天才的な働きは気持ちいいし、柄本佑演じる正義感あふれる部下もいい。

対して、舘、国村はじめ、田中泯、小林克也、橋爪功が演じる、食えない幹部たちが繰り広げる深謀遠慮。戦争に進んでいった理由はさまざまあろうが、側面を見る思いだった。

【小林千穂】(このコラムの更新は毎週日曜日です)