落語家桂文枝(82)の肝いり公演「よしもとピン芸人倶楽部シアター」が始まった。
同公演は、新たなピン芸人のスター発掘を願う文枝の熱い思いで立ち上がり、文枝がアンバサダーを務める。今後も毎月最終月曜日に開催する。
4月に行われた2回目の公演では、真輝志、清川雄司、やまぐちたけし、苺ちゃん、西野、吉本新喜劇の島田珠代、岡田直子、いがわゆり蚊、そして、文枝の弟子桂三実の9人が登場した。珠代が「おなら売りの少女」というエキセントリックかつ下品極まりないネタを繰り出したかと思えば、真輝志は借金1億円強あるある、清川はハーモニカと腹話術の輪唱、苺ちゃんは車掌の教官に扮(ふん)したアナウンス教室、西野はアイドルの夢を持つ娘に現実を諭す母親など、思い思いにネタを披露した。三実は文枝から「着物禁止令」を出されたといい、普段の羽織はかまとは違うスタンダップでの落語調漫談を披露した。
個性あふれるネタに盛り上がりを見せたが、ジャッジするアンバサダーの文枝が東京での仕事からとんぼ返りだったため、劇場入りしたのはエンディング直前。ほぼネタを見ることができず、なぜかゴリラの写真を見て「写真で一言」の大喜利でチャンピオンを決めることになり、文枝へのごますり合戦の様相を呈した末に清川が優勝した。
文枝は「60年近くピン芸人をやってきて、ピン芸人を見る目は誰にも負けない」と豪語。駆け出しの頃の明石家さんまを「MBSヤングタウン」に紹介したり、弟弟子の桂文珍を芸能界に引き込んだ実績を振り返り、「『ああいけるな』という人を見る目、力がある。ところが次の人がなかなか出てこないので、落語家を含めて、次なるスターを吉本から出したい。若い人の力になりたい。なんとか次なるスターを作りたい」と公演を立ち上げた思いを明かした。
文枝の思いの裏には、漫才とピン芸との人気の差がある。「吉本は漫才のイメージが強いですが、昔はピン芸人の方がいっぱいいた。漫才の中に(ピン芸が)入ったら、お客さんも見やすい」。そもそも、関西ローカルのものなども含め数多くの賞レースが用意されている漫才に比べ、ピン芸人が出場できる賞レース自体が少ない。
大阪のお笑い文化の継承と発展のため、上方漫才協会が14年に発足。若手漫才師の育成とサポートを目的に芸を磨く場所として、よしもと漫才劇場が各地に整備された。以降、各地の漫才劇場で芸を磨いた若手芸人たちが、多くの賞レースで結果を残している。
「漫才劇場のような形をマネするんじゃないですけど、それがすごく功を奏しているので、どんどん切磋琢磨(せっさたくま)して。僕もできる限りのアドバイスをさせていただけるなら」とよしもと漫才劇場のような役割を果たしたいとの思いを明かした。
当然、自らが生業とする落語への思いは強い。
「R-1グランプリ、元々は落語のRでしたが、落語家が誰も出なくなってしまった。だから、落語家も出したい。それは強い。なかなか若い落語家が出てこれない状況ですので、落語家も器用にいろんなことができるという形を取れたら。司会やいろんな番組をやって、ほかの漫才の皆さんとか人気も負けない売れっ子になってほしい」
上方落語四天王の尽力、文枝自身や笑福亭鶴瓶らのような落語以外の分野でも活躍する落語家の影響もあって、消滅の危機を脱し二百数十人の噺家(はなしか)を擁するようになった上方落語協会も、近年は新規入門者が年に数人にとどまり、今後を危惧する上方落語家は少なくない。
よしもと漫才劇場のように常設ではないため、短期間でピン芸人のスターが誕生するのは難しいかもしれない。それでも、文枝は「芸もさることながら、人間味、人間力が大事じゃないか。さんまさんにしても文珍さんにしても鶴瓶さんも持っている。トータルで魅力的な人が出てきてほしいですね」と期待している。
【阪口孝志】



