18年に「万引き家族」でカンヌ映画祭(フランス)で最高賞パルムドールを獲得した是枝裕和監督(60)と、あまた人気ドラマを生みだした脚本家の坂元裕二氏(56)が初タッグを組んだ。同氏は28日、同映画祭で邦画として3年ぶり2度目の脚本賞を受賞した。

郊外の小学校で、子ども同士のケンカが起きる。息子を愛するシングルマザーが担任教師の指導、言動に問題があると追及する一方、児童思いで知られる教師にも言い分はあるが、学校の対応は煮え切らない。子どもたちの主張も食い違い、それぞれが発言し、動いたことが別の当事者を傷つけ、気付かぬうちに加害者になっていく。そして、次第に社会やメディアを巻き込んだ大事に発展する。昨今、報道もなされている教師の負担の増大やモンスターペアレンツなど教育における社会問題が、緊迫感がにじむエンターテインメントに昇華されていることに、そうした問題を取材した経験からも、驚かされた。

黒川想矢と柊木陽太が演じる小学生2人が、互いをかけがえのない存在だと気付いていくシーンも1つのポイントだ。カンヌ映画祭ではLGBTQなど性的マイノリティーを扱った作品に贈られる「クィア・パルム賞」を受賞した。ただ、LGBTQなどを自認する以前の子どもの心に芽生えた感情、心の動きを描いた、そのみずみずしさを、先入観なしに作品を見て真っすぐに受け止めて欲しい。【村上幸将】

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