TBS系「アイ・アム・冒険少年」(月曜午後7時)で“絶対王者”の称号を持つ芸人あばれる君(34)。常に全力で、サバイバルナイフ1本で無人島から脱出する姿には誰もが胸を打たれる。テレビ東京系「ポケモンの家あつまる?」(日曜午前8時)では子どもの人気も高い。芸人人生を「必死に泳いだっていう感じ」と振り返る愚直な“ヒーロー”が、芸人としての思いや家族への愛を語った。

★代名詞の番組

「-冒険少年」は多くの特番を経て20年にゴールデンプライム帯のレギュラー化。あばれる君の代名詞ともいえる番組だ。

「うれしかったですね。体張ってきてよかったです。スタッフさんも『お前のおかげもあるぞ』っていってくれたりして、生きていてうれしかったですね」

他の挑戦者が多くのアイテムを持参することが許可される中、あばれる君はサバイバルナイフだけ。「アドバイザーの方もいらっしゃるのでお力をお借りしてですよ」と謙遜するが、番組のエースともいえる活躍ぶりだ。

「自然の中で育ったので、そういうのは、根付いているんだと思います。山に囲まれた人口5000人くらいの町です。高校の山岳部ではインターハイに出ました。そこで基本的なことを学びました」

★今年3月山購入

アウトドア好きが高じて今年3月に300万円で山を購入。「あばれる山」と呼ばれ番組内でもさまざまなプロジェクトが進められている。6月21日放送回では、畑やログハウス、ハンモック、滑り台などを作成する“あばれる山特集”が組まれた。

「楽しいんですよ。プライベートでも行ったりして、癒やしの空間っていうのを味わえます。都会にいると、聞こえない川の音が垂れ流しですからね。マイナスイオンがドーンって」

「すごい楽園ですけど、熊が出るんで、それでとんとんかな」と笑わせる口ぶりに充実感がただよう。

「東京に来て『ネオンの下で遊びてー』って思っていましたけど、結婚して30歳超えてみると、六本木より山の中がいいのかなって思います。ぼくに似合っているのはそっちですね」

「あばれる山」購入の経緯についてこう明かした。

「コンビニでお菓子を買う気持ちと山を買う気持ちは一緒でした。もちろん金額的には痛いですよ。でも気持ち的にそう思わないといつまでもやらないから」

公式YouTubeチャンネル「あばれる君」のスタジオ代わりという意味合いもあったという。

「ここから取り返していくつもりですよ(笑い)。300万出して買えば、動画再生数もすごいんじゃないかと思って、最初の動画は45万(回再生)いったんですけど、この前(第2弾の)チャーハンの動画を出して、2万回だったんです…大赤字です。ここからもう、死ぬ気でやっていかないと。固定資産税だけ残るので」

★楽しく生きたい

YouTubeでは、あばれる君の料理好きという一面も垣間見える。自然に囲まれて作った料理は画面越しにも絶品であることが伝わってくる。家庭でも、夕飯を作ることが多いという。

「ラーメン作りは趣味ですね。ラーメン屋を出したかったんですけど、開店資金が山に消えたんで…。もしかしたら山でやることになるかもしれない。とてつもない山の奥なのでお客さんが来るから分からないですけど…山の元(300万円)をとるために一発逆転狙って1杯150万円。YouTubeでじわじわいくよりお金持ち狙いで、極上の環境を提供して、ラーメンを作って。(意外と有りかもしれない?)いやないですよ!(笑い)」

YouTubeでは大好きなゲームの生配信なども人気だ。好きなことを仕事にしている実感がある。

「楽しく生きたいって思っています。今は楽しい仕事でスケジュールを染め上げていっていますね。好きなことに集中して、そこが花咲けば最高ですね」

★都合いいパパ?

YouTubeチャンネルには“ちびれる君”こと長男や“よめれるさん”こと妻・ゆかさんが登場し、仲むつまじい様子を発信している。

「普通のパパですかね。(幼稚園の)送り迎えして、特段明るいわけでもないし、特段勉強させるわけでもないし。都合いいパパかもしれないですね」

自身の出演番組は家族で一緒に見るという。

「(長男は)そんなに興味ないみたいです。大変そうだねとかいってくれたり、からいもの食べているときは、本当にお水もってきてくれたりしますね。同調圧力に負けない子どもでいてほしいです」

★中学で芸人決意

どんな夫なのか。少し照れながら教えてくれた。

「奥さんがいなかったらダメ夫じゃないですかね。お金の管理とかも全部任せているし、細かいところも。ぼくは仕事して無事に家に帰るっていうことだけですね。(ゆかさんは)頭が良くてきれいな奥さん。優しくて頭がいいですね」

子ども世代から絶大な人気を得ている現状についてどう思っているのか。

「熱いときは熱い。痛いときは痛い。悲しいときは泣く。喜ぶときは笑う。そういうのは意識しています。ただ子どもにウケるようにっていうのは考えていなくて、大人でも誰でも笑わせにいっています」

「演技も歌もできてピンチをチャンスに変えられる芸人って最強だ」。そう思って中学生で芸人になることを決めた。高卒でお笑い養成所に入るつもりだったが、両親の許可が下りず、大学へ進学した。本格的にお笑いをはじめたのは大学3年。周囲が就職活動を始めるタイミングで舞台付きの居酒屋に飛び込んだ。

「自分たちでチケット売って、一からライブを作って、寝ないで稽古して。その頃からピン芸人でした」

アマチュアお笑いの大会を調べて出場し、同世代としのぎを削った。当時からネタは今のスタイル。世界観を作り上げる1人コントだった。「全国学生お笑い選手権」で3位に入り、現在の所属事務所のお笑い養成所に特待生で入学。卒業後、約6年間は売れなかったが「自分の好きなことやっているから、どうなろうと自分の責任」と前に突き進んだ。自身の強みをどう捉えているのか。

「メンタルに関しては強いのかなって思いますね。ずっと1人でやってきて、自信のなくなる時期とかもあったので、それを乗り越えてきたので、強いのかなって」

★ドンドン変化を

大切にしていることは「やらせていただいている」という精神だという。今年で35歳になる。

「スキルを高めていって本物にしていかないといけないなって。30歳超えてちょっとおままごとじゃないので。自分なりに蓄積した経験をインプットをしていかないと。教養とかも深めていかないといけない」

外見通り、ストイックな印象を受ける。バラエティー番組での活躍が目立つが、ネタへの思いは強い。

「ゆくゆくはネタを舞台で発揮できたらいいなとは思っています。今年か来年は単独ライブやりたい。今インプットするのは、舞台の上で発揮したいから。最終的にはロケとかもネタとかに反映できたらと思っています」

スタンドアップコメディーにも挑戦したいという。 「しっかりとお話で、マイク1本で笑いをとるっていうのはやっていきたいと思っています」

最後に今年の目標を聞いた。

「変わらなきゃいけない年がやっぱりきていると思うんですよ。下からの突き上げもある。自分が自分の伝えたいことをちゃんと伝えられる年にしたい。なんだろう…ドンドン変化していきたいですね、いい意味で」

変化を恐れず、全力であばれまわる。【佐藤成】

▼「アイ・アム・冒険少年」で共演する所属事務所の先輩、お笑いコンビ、ハライチ澤部佑(35)

あばれる君は、番組で誰にもできない自分だけの聖域を見つけたんだなぁという印象。自分の得意なことや輝ける場所を見つけるのは難しいけど、彼にとってはそれが無人島なんだと思う。ボケ、ツッコミなどの技術が決して高い訳じゃないけど、番組を勝利に導くエースって感じです。本番前後であんなに言葉に出して予習復習する芸人はなかなかいない。素直な人間だと思います。印象深いのは楽屋で「俺の番組だからな!」と言っていたこと(笑い)。エースの自覚が強めに出てきたと感じました。

◆あばれる君(本名古張裕起=こばり・ひろき)

1986年(昭61)9月25日、福島県矢祭町生まれ。駒大法卒。ワタナベコメディスクール9期生。15年に「R-1ぐらんぷり」決勝進出。鬼束ちひろの「月光」を使用し、「熱血ひとり芝居」と呼ばれる1人コントを行う。レギュラーはテレビ東京系「ポケモンの家あつまる?」など。179センチ。

◆「アイ・アム・冒険少年」

岡村隆史、田中直樹、川島海荷が司会を務めるTBS系バラエティー番組。無人島からの脱出や、山でのサバイバルなどが人気で、大自然でのロケの様子をVTRで見ながらスタジオでトークしていく。

(2021年7月4日本紙掲載)

私が大好きな巨人桑田真澄投手チーフコーチ補佐のものまねをリクエストすると「一塁側、三塁側から」とそれぞれの角度から快く応えてくれたあばれる君。これは三塁側
私が大好きな巨人桑田真澄投手チーフコーチ補佐のものまねをリクエストすると「一塁側、三塁側から」とそれぞれの角度から快く応えてくれたあばれる君。これは三塁側