今年5月に就任丸5年を迎える花組トップ明日海(あすみ)りおが、兵庫・宝塚大劇場で、希代のプレーボーイを好演している。1本物「祝祭喜歌劇 CASANOVA」で、明日海が演じる主人公は、女性との幾多の浮名から混乱を招いた罪で投獄される「究極のモテ男」だ。トップ娘役仙名彩世(せんな・あやせ)演じる修道院から出たばかりの娘との情熱的な恋でも魅了している。仙名は今作で退団する。宝塚公演は3月11日まで。東京宝塚劇場は3月29日~4月28日。

かつての「フェアリー系」も、堂々たる「花男」。トップ・オブ・トップ。強くしなやか、艶も備える明日海は、今年の目標を「鍛(える)」と書き記した。

「心身ともに、です」

今年の初作品は、希代のプレーボーイを主人公とする「CASANOVA」。18世紀のベネチアを舞台に、数々の女性と浮名を流した役柄を「今の時代の薄めの言葉で言うと、品があって、芯もある『チャラ男』ですかね(笑い)。おどけても、自信があって、レディーを扱うスマートさにもたけている」と説明した。

冒頭、大勢の娘役に囲まれる場面もある。

「男役をやってきてよかった(笑い)。女性すべてをとりこにし、娘役が情熱的に歌い踊ってからみついてくれる。だからこそ、ちゃんと(魅力に)納得がいくたたずまいでいないと」

圧倒的な美貌、華やかなルックスの明日海は、これまでも光源氏など、和洋のプレーボーイを演じてきた。今回、演出の生田大和氏から「パイレーツ・オブ・カリビアン」を提案された。「少し悪く見えるような部分は、あの映画のジョニー・デップさんだなと」。

情熱的に恋や夢に生きる主人公に「男役としてはうらやましいけど、ひとたび捕まれば一生、牢(監獄)を出られない。それはいやかな~」。柔らかい笑顔で言う。今回は3人目の相手役、仙名の退団公演になる。歌、ダンス、芝居すべてに達者な仙名は、娘役としては遅い就任だった。

「稽古で初めて一緒に合わせるときから(高い)クオリティーを。本当にありがたく貴重なことでした。彼女と組むことで、理想高く追求していけた」

次期トップ娘役には華優希(はな・ゆうき)を迎える。4人目の相手役は現在まだ5年目。自身は100周年イヤーでトップに就き、丸5年。他4組のトップは全員が変わった。「たった…たった5年で、すごく変わるものだな。私も」。就任直後、10年に1度の運動会にトップ最下級生として花組を率いたが、最下位。組子に逆に励まされた。

「最初は『みんなも私じゃ不安だろうな』と思い、焦りの方が大きかった」

体育会系的に言葉や態度で引っ張るのではなく、黙々と稽古に集中する姿を見せることで花組をけん引してきた。組の雰囲気に敏感になった。稽古中に緩みが見えれば「グッと集中した姿」を、緊張感が強まれば「ホワッと緩めれば」。明日海流のリーダー学だ。

「稽古中の夜休憩は、みんなで円になって、お弁当を。以前は私が休憩なんてしてちゃダメって…。でも、今は切り替え、いいリフレッシュになりますね」

6月には、劇団初の横浜アリーナ公演も決まった。

「今までのどの劇場よりも広い。行ったこともない。(出演)前から言うのも…ですけど、一生の思い出です」。まだ知らない「明日」へ向かう歩が緩むことはない。【村上久美子】

◆祝祭喜歌劇「CASANOVA」(作・演出=生田大和、作曲=ドーヴ・アチア) 18世紀ベネチアに生まれた希代のプレーボーイ、ジャコモ・カサノヴァ。詩人や作家、聖職者、詐欺師、錬金術師、さらにはスパイ…。多様な“顔”を持つ男を描くオリジナル・ストーリー。映画などでも取り上げられ、数奇な運命をたどった男の半生を描く。楽曲は「太陽王」「1789」などを手がけたドーヴ・アチア氏が書き下ろした。女性との浮名から、風紀を乱した罪で投獄されたカサノヴァは、周到な計画を立てて脱獄。カーニバルにまぎれ逃走劇は進む。その最中、修道院から出たベネチア総督のめいベアトリーチェ(仙名)と出会う。

☆明日海(あすみ)りお 6月26日、静岡市生まれ。03年入団。月組配属。08年「ミー&マイガール」で新人公演初主演。12年、月組準トップ。当時トップ龍真咲と、異例の主演役がわりで2作。花組へ移り14年5月、同トップ。15年第2回台湾公演主演。仙名彩世の退団後は、華優希を4人目相手役に迎える。昨年は名作漫画「ポーの一族」で好評を得て、同秋には千葉・舞浜アンフィシアター公演。今年は劇団初の横浜アリーナ公演も決まっている。身長169センチ。愛称「みりお」「さゆみし」。