宙組トップ真風涼帆は、06年初舞台作の16年ぶり再演に巡り会い主演する。スペインの内戦に巻き込まれ、ファシズムと闘う写真家を描いた「NEVER SAY GOODBYE」。ライカのフィルムカメラを手に、センターに立つ。兵庫・宝塚大劇場で2月5日~3月14日。東京宝塚劇場で4月2日~5月1日。

初舞台作が16年ぶりに再演され、主演する宙組トップ真風涼帆
初舞台作が16年ぶりに再演され、主演する宙組トップ真風涼帆

17年11月のトップ就任から5年目。ラインダンスを披露した初舞台作が16年ぶりに再演され、主演する。真風は「まさか時をへて…夢にも思っていなかった。身の引き締まる思いで光栄。チャンスを頂けた」と率直に驚きを口にした。

作品は1936年のスペインが舞台。内戦に巻き込まれていく写真家ジョルジュを描く1本物だ。16年前は口上、ラインダンスで参加し、当時は新人公演にも初舞台生が出演していた。

「初めて宝塚大劇場の幕が開き、お客さまから拍手を頂いた日はとても大切な日。鮮明に覚えています」

新人公演では民衆のナンバーに入り「銃を持ったり、旗を持ったり…。わけも分からず振り回していただけでしたが」と苦笑い。

「稽古場で音楽が流れると『ここで移動して』とか、思い出します。潜在意識、本能に染み渡っているような。イメージが強い分『今回は今回』と頭では分かっていても、どうしても本能的に記憶を追いかけてしまう。きちんと今のジョルジュを作っていかなきゃ」

前回は、6年以上宙組トップに在位した和央ようかの退団公演で「私たちからしたら雲の上の上の上の存在。磨き上げられた男役の究極を目の当たりにした感じでした」と振り返る。

作品をあらためて見て、作曲家フランク・ワイルドホーン氏、作・演出の小池修一郎氏によるコンビネーション、作品の奥深さ、ジョルジュの深い愛、勇気に感銘。和央、ワイルドホーン氏から「頑張ってね」と温かい言葉をもらった。

撮影する側の気持ちへも思いをめぐらす。

「被写体になることはありますが、撮る側の気持ちはあまり考えたことがなかった。毎日が新鮮です。あの時代、フィルムカメラで、今みたいに連写もできない。できごと、とらえたいと思う真実の瞬間をとらえていく。調べれば調べるほど深い。まして内戦という状況もからんでいる」

ポスター撮影では、ライカのカメラを持った。「まだ買ってないんですけど、フィルムカメラに興味をそそられています」と笑う。

もっとも、戦場に生きる主人公だけに、現代とは環境が違う。共感よりも「ジョルジュという人に自分の身を置いていく」ように取り組む。戦場カメラマンの記事も読み、心を知った。

「一番悩むことは、目の前で人が死にそうな時に、助けるべきか、撮るべきかという記事を拝見して、究極の精神力だなと…。あの時代の感覚を共感することは難しい。役に没頭し、ジョルジュという人に自分の身を置く感覚が強い」

20年には、初演主演の和央と当時のトップ5人が、劇中曲「ONE HEART」を歌う特別映像が公開された。「歌詞もメロディーもすてきで…。今回、お芝居にあわせると、より感情が高ぶるといいますか…」と稽古に励む日々だ。

ジョルジュの戦い、闘いと、コロナ禍の闘いに「見えない敵との闘い。その意味では、少しだけ通じるものがあるかな」とも言う。

「ジョルジュの生きざまをみて、お客様が『今日を一生懸命生きよう』って思っていただけたら。自分自身がジョルジュを演じながら、そう思っています」

先の見えない時代に-。

「先を考えるよりも、今を一生懸命生きて、それが明日、あさってにつながっていればいいと思ってやってきた。毎日、今日1日があることに感謝して、自分ができることを精いっぱいやっていこうと思います」

男役原点の初舞台作での主演を前に、意も新た。「男役も娘役も舞台人は、人となり、経験からつながっていく。すてきだと思う男役像を、ずっと育てることが大切」。思い出深い作品で2022年をスタートさせる。【村上久美子】

壮大な楽曲のミュージカルへ意気込む真風涼帆
壮大な楽曲のミュージカルへ意気込む真風涼帆

◆ミュージカル「NEVER SAY GOODBYE-ある愛の軌跡-」(作・演出=小池修一郎、作曲=フランク・ワイルドホーン) 「スカーレット・ピンパーネル」などを手がけた作曲家ワイルドホーン氏と、小池修一郎氏のコラボで、06年に宙組で初演。和央ようか、花總まりコンビの退団公演として上演。現宙組トップ真風涼帆が初舞台を踏んだ。16年の時をへての再演になる。時代は1936年。ナチス政権下のベルリンオリンピックに対抗し、バルセロナで人民オリンピックが開かれる。写真家ジョルジュ(真風)は、取材へ。女性劇作家キャサリン(潤花)と恋に落ちるが、2人はスペイン内戦に巻き込まれていく。「ONE HEART」など、名曲でつづられる大作ミュージカル。

☆真風涼帆(まかぜ・すずほ)7月18日、熊本県生まれ。06年入団。星組配属。新人公演主演5回。15年5月に宙組、17年11月に相手娘役に星風まどかを迎え、同組トップ。19年「オーシャンズ11」では、11年新人公演で主演したダニーを好演。昨年、2人目相手娘役に潤花を迎えた。身長175センチ。愛称「ゆりか」「すずほ」。