前回も取り上げたが、今回も演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ」を紹介したい。

ちょうど3月21日に千秋楽を迎えたばかり、出来たてほやほやのコラムである。まずは簡単に自身のキャリアについて。30歳過ぎたあたりから独学で映画を製作。国内外の短編映画祭で評価された後に、映画「リュウセイ」で劇場デビュー。その後、映像作品を中心にキャリアを重ねるが、映画監督としてワークショップなどを経験するうちに舞台演出にも興味が沸き、2015年に初の演出舞台「VOTE」を上演。その後も経営する南青山のバーで一人芝居などを行う。2021年からは年に2本ペースで本公演も手がけ、今回の舞台が5作品目となる。

舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ2」(舞台ハイライ)。芝居がメインだが、歌にダンス、ゲームコーナーとエンタメ要素たっぷりの舞台である。参考にしているのはドリフターズ、さらには若手俳優の一生懸命な姿をみてもらいたい。 

ちなみに、舞台について「どうしてやってるんですか?」と聞かれることが多い。言われてみればそうである。順調であろう映像の仕事の合間に、集客未知数の新人俳優を多く起用し、どう考えてもリスクばかりの中、やる意義を問われる。

毎回即答できなかったが、千秋楽を終えた今だと言える。若者たちが一生懸命取り組む姿を間近で見られ、さらには俳優としてグッと成長していく様がわかることだと。もちろんビジネスとして成立させなければいけないが、その姿を見ると、どうでもよくなる瞬間がある。そう、この仕事を選んでよかったと。

そこで今回紹介したいのは、2作連続で唯一出演してくれた野口友輔。東海エリア4県のご当地イケメンボーイズを発掘するオーディションにて5075人の中から選ばれたボーイズグループ「Hi☆Five」に所属する。出会いはハイライの前身となる2021年夏の舞台。当時はまだ初々しい部分もあったが、今回の舞台では主演の富樫(慧士)君と一緒に周囲をまとめてくれていた。

俳優としてのスキルも格段に上がってきているが、特筆すべきはゲームコーナーの仕切り。即興でセンスの良いワードを連発し、彼がいたからこそ成立しているシーンが多々ある。ハイライにとって最も欠かせない俳優の一人といっていいかもしれない。

最後に、温かいエピソードをひとつ。今回の舞台で仲間を探して追いかけるシーンがあるが、偶然にも公演後に似たシーンに遭遇した。それは、とある俳優が知り合いのプロデューサーを共演者に紹介したいと探していた時である。役柄同様、真剣なまなざしで、もしかしたらその子のキャリアにつながるかも、との思いで必死に劇場を走り回っていた。

一緒にいた期間は1カ月程度だが、本当の仲間になったんだと思い、ついニタリとしてしまった。新人俳優の登竜門としてまだまだ続けていきたい舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ」、どこか頭の片隅に覚えていただければこれ幸いです。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。昨年11月には俳優藤原大祐主演の最新映画「追想ジャーニー」が公開、今年3月には演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ2」も上演した。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)