先ごろ行われた「第18回テレビ朝日新人シナリオ大賞」授賞式で、審査員の両沢和幸さんが応募作の傾向について語った言葉です。

 優秀賞2作と奨励賞1作の受賞者は全員男性でしたが、描いた主人公は全員女性でした。鳩レースの老人との出会いをきっかけに再び陸上競技と向き合う女子大生、息子の家出まで仕切って追い回す豪快シングルマザー、生死を超えて友情を結ぶ2人の女子高生、というラインアップで、男性キャラは、ヒロインと適切な距離をとった見守り役や、言いたいことを飲み込むタイプとして登場。シナリオを拝読しましたが、確かに受け身で変化なくフェードアウトする存在で、両沢さんの言う「元気な男」とは対照的です。

 両沢さんは「若い俳優や脚本家志望とよく話すが、男はみんな迷っている。何をしたらいいのか、迷路の中にいるような若い男連中が多い」と現場ならではの視点を語り、「男はどう生きるべきかをぜひ書いてほしい」と切望しました。「皆さんテクニカルだし社会性のある題材の取り上げ方もうまいが、そこに関する自分なりの意見がない。世の中ではこう言われているけれど私はこう思う、という部分を見たいのが正直な思い」。

 今年の大賞は「該当者なし」となりました。決定打不足について、審査員の岡田恵和さんは「似たような雰囲気の作品が多い。ティーンを題材に、生き方を肯定するものが多かった」。両沢さんも「(作者の)気持ちの優しさや、視聴者への思いやり」と分析しています。対立を避けるデリケートな時代性が、男性キャラの描き方に反映されているのかもしれません。しかし、「アンナチュラル」でも「おっさんずラブ」でも、ヒットするドラマほど男性キャラの意思と振る舞いが生き生きと描かれているもの。女性視聴者としては、やはり男性キャラから刺激や影響を受けたいと思うのです。

 プロデューサー出身の両沢さんは、最後に「僕ならこうダメ出しする」と、愛ある指摘もプレゼントしました。「この老人は最後、お亡くなりになった方がいい。最近は登場人物を救おうとするものが多いが、世代を描くということは、どうやって死ぬかを描くこと」「最後はこの母親が危機に陥って、少年が成長すべき。少年と母親の関係性が変わらないままのエンディングは不満」。こんなふうに男性キャラを生き生きと動かしたら、ヒロインの厚みがさらに増して、物語が一気に輝きそう。やはり売れっ子脚本家は“自分はこう思う”がしっかりとあって、元気です。

 とはいえ、脚本コンクールは、その年の話題作に影響を受けて傾向が傾いたりするもの。「来年は『おっさんずラブ』的なものがわっと来ると思う」(岡田さん)という指摘もあり、元気な男性キャラが量産されるかもしれません。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)