3月はテレビにとっても別れの季節。4月改編を受け、今月末は各局で長寿番組の終了や出演者の卒業が相次いだ。最終回企画やラストメッセージがコンテンツとなって長尺化する中、それぞれのお別れも個性がにじんだ。印象に残った10の言葉をメモした。

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【番組終了MCの言葉】

◆「自分の実力不足だと本当に思う。必ず力をつけてまたリベンジするので待っていてほしい」(23日、日本テレビ「火曜サプライズ」ウエンツ瑛士)

12年続いた番組が幕。最終回でここまで重いエンディングも、「自分の実力不足」と率直に反省する人も初めて見た。共演のヒロミから「火サプの後番組やることになった」と報告を受けるダブルパンチ付き。笑いが止まらないヒロミに悪態をつきながらも、「ゲストで呼ぶよ」と言われて「ありがとうございます」。この切り替え力にある種の感動。

◆「物語を12年にわたりお届けすることができたのは皆さまのおかげです。長きにわたりお付き合いいただき、ありがとうございました」(17日、NHK「歴史秘話ヒストリア」渡辺佐和子アナ)

松平定知アナの「その時歴史が動いた」が名番組すぎて、スタート当時はあれこれ言われたヒストリアも12年。前者の9年より長く続いたのだから感慨深い。後番組「歴史探偵」が控えている余裕もあり、昔ながらの簡潔な締めは逆に新鮮。

◆「来週から『ラヴィット!』が始まります。私は見ませんけど」(26日、TBS「グッとラック!」立川志らく)

終了が決まってから、やけくそで番組が急に面白くなったと評判で、「あと半年か1年やっていたらという悔しさはある」と2分間グチりまくり。今後2、3年は心穏やかでないとし、後番組も「見るわけない」。芸能人のまっとうな自意識をテレビで久々に目撃し、おもしろかった。「短命で終わったら承知しない。何のために『グッとラック』を終わらせたか分からなくなる」。けんか上等な個性をスタート時から見たかった。

◆「来週の月曜から私も1人の視聴っ…者として見せてもらいたいと思います。期待してくらさい、期待してください!」(26日、フジテレビ「とくダネ!」小倉智昭キャスター)

22年、5646回務めたベテランキャスターでも最終回はこんなにかむほど緊張するのかと、長寿番組が終わるリアルなライブ感。「レインボーブリッジから朝日がきれいで」とセンチメンタルな場面も。「僕がいなくても絶対にいい番組ができる」と後番組にエール。悔しさを前面に出していた「グッとラック!」立川志らくと、同じ日に貴重なコントラスト。

◆「今後とも、よろチクビー!」(27日、日本テレビ「メレンゲの気持ち」久本雅美)

放送25年の歴史に幕。「メレンゲの気持ちを感謝の気持ちに変えて」とあいさつし、「よろチクビー」で明るく締めた。朝ドラマニアの久本のため、幼少期からの半生を朝ドラ風にドラマ化した「まちゃみ」をサプライズ制作し、すごいクオリティー。これだけ好きでも朝ドラからオファーが来ないと嘆き、「出たい」と大号泣。この日のどの場面より泣いていた。

【卒業MCなど】

◆「『クローズアップ現代+』は、これからもひるまず伝え続けていきます」(18日、NHK「クローズアップ現代+」武田真一アナウンサー)

大阪放送局に異動する武田アナが、4年務めた「クロ現+」を離れた。「社会の中で懸命に生きている皆さんの声」に対し、「せめて私の心に深く浸し、共振させて社会に伝えよう」とした4年間の思いを1分にわたり語った。異動は政府への忖度(そんたく)ではないかとの一部報道はさておき、「これからもひるまず」と、持ち前の笑顔が尊かった。

◆「一生分の思い出をありがとうございました」(24日、TBS「東大王」鈴木光)

東大王を卒業する鈴木光が約1分半にわたり涙であいさつ。SNSなどに寄せられた視聴者の声に「これだけ優しい言葉をかけてもらうだけの価値が自分にあるのか」と感謝を述べ、どこまでもまじめな人柄に感銘を受けた。新シーズンを迎える番組は「東大王を強くするために、(メンバーを)一度白紙に戻す」と発表。

◆「孤独を感じたら『スッキリ』を見てください。チームスッキリはあなたを1人にすることはありません。それは加藤浩次さんという男がそういう男だからです」(26日、日本テレビ「スッキリ」近藤春菜)

5年間出演した番組を卒業。涙で声を詰まらせながら、約2分間にわたりアツい“演説”。加藤率いるチームスッキリを「何か違った時は真摯(しんし)に向き合って謝る」「一緒に怒ってくれたり寄り添ってくれます」と猛アピール。4月からフリーとなる加藤への思いがほとばしり、画面の圧はいちばん。

◆「私たちが日々向き合っているのは、多面的で複雑で、簡単には答えが出ない問題ばかりです」(26日、NHK「ニュースウオッチ9」有馬嘉男キャスター)

4年間務めた番組を離れるラストメッセージ。悩みながらの道のりを振り返りながらも「それでも、やることは変わりません。何度も現場に足を運び、皆さんの声を聞き続ける」。有馬さんと武田アナ。民主主義と視聴者の声にとことん寄り添ってくれた両エースの降板は本当にさみしい。感謝とともに、次の活躍を期待して待ちたい。

【ラジオ】

◆「誇りに思うってこういうことなんだなと感じた。52年走り続けた最後はみんなでゴールしたいと思います。皆さん本当に本当に本当にありがとうございました。元気でね! バイバーイ!」(26日、文化放送「走れ!歌謡曲」千本木彩花)

52年もの歴史に幕。番組と同世代の元リスナーなので、「いい最終回を」と祈るような気持ちで放送を聴いた。最後の1年半を務めた声優千本木彩花さんが、明るい涙声で立派な幕を引いてくれた。歴代パーソナリティーとすべてのリスナーをたたえ、「音楽がある限り、私たちはつながっています」「『走れ』を一緒に聴いてきたんだからみんな大丈夫」。最後の1曲は山口百恵の「さよならの向う側」。これ以上ない選曲に涙した人も多いのでは。52年間、いい番組をありがとうございました。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)