民放10月期の秋ドラマが続々とスタートしている。ドラマ枠急増で今や各局のラインアップを把握するのも困難な中、この秋も43本の各局ドラマを無料で同時配信、見逃し配信している強い味方が民放公式テレビ配信サービス「TVer」だ。同社の若生伸子社長(61)も大のドラマファンの1人。秋ドラマ特集ページを手掛ける小原一隆氏(44=元ドラマプロデューサー)とともに、今期の傾向と個人的注目ドラマを挙げてもらった。
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若生社長はフジテレビ執行役員を経て今年6月にTVer社長に就任したばかり。同じくフジ出身の小原氏はプロデューサーとして「カギのかかった部屋」(12年、主演大野智)、「ビブリア古書堂の事件手帖」(13年、主演剛力彩芽)、「残念な夫。」(15年、主演玉木宏)などのヒット作を手掛けた経歴の持ち主。そんな2人は、秋ドラマのラインアップに「挑戦的な意欲作が多い」と口をそろえる。
若生 このところ、ヒロインベースのドラマが多かったと思うのですが、今期は若手男優が勢ぞろい。群雄割拠の中で、誰がいちばんユーザーの心をつかむのかが楽しみですね。「silent」(フジ系木曜10時)の目黒蓮さんもすてきだし、「クロサギ」(21日スタート、TBS系金曜10時)の平野紫耀さん、「PICU小児集中治療室」(フジ系月曜9時)の吉沢亮さん、「アトムの童」(TBS系日曜9時)の山崎賢人さんなど、皆さん圧倒的な存在感。それぞれの持ち味と作品とのマッチングにも注目したいです。
小原 物語から実際にボーイズグループがデビューする「君の花になる」(主演本田翼、TBS系火曜10時)や、「親愛なる僕へ殺意をこめて」(主演山田涼介、フジ系水曜10時)のバイオレンスの表現など、攻めた試みが多いですよね。「エルピス-希望、あるいは災い-」(24日スタート、フジ系月曜10時)は長澤まさみさんの4年半ぶりの主演で、サスペンスをカンテレさんがどう作ってくるのか。「silent」は、SNSでの若者層への刺さり方が見たことのない勢いなので気になります。
寒くなるにつれ在宅時間が延びる秋はドラマ観賞には絶好の季節。
若生 やはりラブストーリーは気になりますね。クリスマスに向かっていくクールなので、「silent」にはキュンとさせてほしいです。
深夜では、小原氏がテレ朝の2本を挙げている。
小原 お笑い芸人を目指す人間模様を描く「最初はパー」(28日スタート、金曜11時15分)は、SixTONESのジェシーさんの伸び率がすごいだろうなと。「ジャパニーズスタイル」(22日スタート、土曜11時半)は、長回しのシチュエーションコメディーを仲野太賀さんがどう見せてくれるか楽しみです。
韓国ドラマの勢いとは対照的に旗色がいまひとつとされる日本のドラマだが、小原氏は「コンテンツパワーは下がっていない」と胸を張る。
小原 視聴形態の変化でリアルタイムで見る人が減っているのは確かですが、視聴率が下がったからコンテンツの質も下がったと見られがちなのは残念。話題の韓国ドラマも日本の過去のドラマを参考にしている部分が多くみられるし、日本のドラマはやはり面白い。流れを日本のドラマにもっていくためにも、TVerができることは積極的にやっていきたい。
今まで1週間限定だった見逃し配信も、物語の入り口となる第1話を長めに置けるように各局に働きかけ、この秋は約6割の作品が呼応している。前半ダイジェストや後半ダイジェストなど、途中からいつでも参加できる試みも好評だ。「長澤まさみ特集」「松重豊特集」などの各局横断企画も、ドラマ界の盛り上げに一役買っている。
若生 自分で言うのも何ですが、TVerって奇跡の構図なんです。なかなか放送局5系列が手を携えて何かをやるというのは、これまでオリンピックくらいしかなかった。各局のドラマを全部見ることができるTVerによって、日本のドラマって面白いなと知っていただき、テレビを見ようかというきっかけになればいいと思うんです。
リアルタイム配信ゆえ、テレビで見るのも、スマホからTVerで見るのも受け手のライフスタイル次第になった。若生社長は、TVerならではのコミュニティーの方向から、ドラマ界の盛り上げに貢献できればという。
若生 TVerでご覧になるユーザーの方々は、ドラマに心酔するという従来の見方とはまた違って、SNSで話題になっているからちょっと見てみようかと、コミュニティー感覚で楽しむ見方もあるんですよね。「お気に入り登録」をめぐってそれぞれのドラマのファンがツイッターなどで交流したり。そういうコミュニティー空間に、TVerがなれたらいいなと思います。
◆TVer(ティーバー) 民放公式テレビ配信サービス。ドラマ、アニメ、バラエティー、ニュースなど約600の番組を配信し、今年4月にはキー局5系列のリアルタイム配信もスタート。テレビがなくても地上波番組を同時配信で楽しめる便利さから特に若いユーザーの伸び率が高く、テレビコンテンツを幅広い層に届けるポータルサイトとして人気。今年7月にはアプリ累計ダウンロード数が5000万を突破。
【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)








