松本清張ドラマスペシャル「顔」(テレビ朝日系、24年新春放送)で30年ぶりにドラマ復帰する女優後藤久美子さん(49)が、都内で行った取材会で語った言葉です(13日)。変わらない美貌でカメラ席が大いに沸きましたが、自分の言葉でしっかりと意思を語る“ゴクミらしさ”もまったく変わっていませんでした。

11歳でモデル活動を始め、2年後にNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」(87年)の愛姫役で一躍人気者に。「国民的美少女」という言葉はこの人から始まったわけですが、「美少女」というマスコット的な枠に収まらない主体性の持ち主ゆえ、生意気というイメージで語られることもしばしばあったんですよね。49歳になったいま、歩いてきた道のりと個性が何のハレーションもなくしっくりとはまり、いよいよかっこいいという印象です。

当時のゴクミ語録を拾おうとデータベースを調べると、そもそも「美少女」と言われることが好きではなかったようです。16歳の時、本紙のインタビューに「今では名前の上につける記号のようなものと思っている。深く考えないようにしている。だけど、本気でそう言われたら嫌な気がする」と語っています。

タレントなら願ってもないはずの「美少女」の評価を、なにげにばっさり。期待されるイメージに忠実な令和のアイドルとはまったく違う自意識に驚かされます。美の基準について、彼氏ができたとたんにみるみるきれいになったというクラスの女子を引き合いに、「きれいって、生きていくうちに身についていくもの。もともとあるものじゃない」とストレートに語っています。

取材会では、自身を「オスカープロモーション所属歴40年の幽霊会員」と自虐して会場を和ませるなど、ゴクミ語録にもいい年輪を感じました。途中、ドラマとは関係ない子育ての質問が出た時も同様です。「松本清張の『顔』で、テレビ朝日ドラマスペシャルで、武井咲ちゃんとの共演で、そこがポイント!?」と、あえて質問者を詰めて笑わせ、思春期の子育ての苦労などをきちんと回答していました。

90年、NHK大河ドラマ「太平記」で北畠顕家を演じた際のスタジオ収録を取材しているのですが、美しい青年武将姿を懐かしく思い出しました。どんな大物脚本家が相手でも内容にこだわり、納得した台本はしっかり読み込んであっという間に覚え、撮影現場に持ち込まない。多くのクリエイターが脱帽したスタイルは今も健在でしょうか。

今回の脚本は浅野妙子さん。台本を読んだ後藤さんは「うまく現代風にアレンジされていて、こういうことってありえるよね、という日常生活も、サスペンスもある。非常にうまく書けていると思います」と自信をみせています。演じるのは、殺人を目撃してしまった弁護士の役どころ。いかにもぴったりで、今から楽しみです。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

13日、テレビ朝日系松本清張ドラマスペシャル「顔」の囲み会見に登場した後藤久美子
13日、テレビ朝日系松本清張ドラマスペシャル「顔」の囲み会見に登場した後藤久美子