人間国宝の歌舞伎俳優坂東玉三郎(67)が11月8日に22年ぶりのアルバム「邂逅 ~越路吹雪を歌う」をリリースすることが10日、分かった。初舞台を踏んで60年、敬愛する故越路吹雪さんの三十七回忌に合わせてリリースするシャンソンアルバムで、11月8、9日にはコンサートも行う。

 歌舞伎界きっての女形の玉三郎とシャンソンは意外な組み合わせと思われそうだが、玉三郎は95年にシャンソンを中心とした初アルバム「一寸おたずねします」をリリース。日本を代表するシャンソン歌手だった越路さんと親交が深く、最大の越路ファンを自称するほど。今年3月に越路さんの三十七回忌追悼のコンサートに出演し、晩年の代表作だったシャルル・アズナヴール「妻へ」を歌った。

 そこであらためてシャンソン歌手としての評価を高め、今回、シンガー玉三郎の根幹を表現したアルバムの発表に至った。越路さんの歌唱で知られるシャンソンの名曲「枯葉」「妻へ」「群衆」「人の気も知らないで」など14曲を魂こめて歌った。そこには「越路吹雪」という史上最高のエンターテイナーの功績を歌い継いでいこうという、玉三郎の思いがこめられている。発売日も、越路さんの命日である11月7日の翌日に設定された。

 玉三郎は「敬愛する越路吹雪さんの素晴らしい歌を、将来の人たちにも歌いつづけてもらうために、今回、三十七回忌を期に、久しぶりのレコーディングに臨みました。ステージでも皆様にお会いできるのを楽しみにしております」とコメントした。このリリースを記念して、11月8、9日に越路さんゆかりの地でもある東京の銀座・ヤマハホールで2日間のコンサートを行うことも決まった。

 ◆坂東玉三郎(ばんどう・たまさぶろう)1950年(昭25)4月25日、東京生まれ。56年に14代目守田勘弥の部屋子になり、57年に初舞台。64年、勘弥の芸養子となり、5代目坂東玉三郎を襲名。類いまれな美しさで人気となり、「助六」の揚巻、「京鹿子娘道成寺」など女形の数々の大役を演じる。12年に人間国宝に認定され、14年には紫綬褒章。屋号は「大和屋」。