邦画の興行収入歴代2位の250億3000万円を記録した、16年のアニメーション映画「君の名は。」を手がけた新海誠監督(44)の、商業デビュー15周年を記念した展覧会「国立新美術館開館10周年 新海誠展 『ほしのこえ』から『君の名は。』まで」記者発表会が10日、都内の同館で行われた。

 この日は新海監督と、「君の名は。」で主人公の立花瀧を演じ、展覧会の音声ガイドを務めた神木隆之介(24)が登壇した。新海監督は「すごくすてきな展覧会…ただ個別に褒めると、自分自身を褒めるみたいになっちゃうので言葉にしにくい。作品を子どもに例えたりしますが、どうなっていこうと僕はあまり興味がない。『君の名は。』ハリウッド版の話もありましたが、どうなるか楽しみであるのと同時に、旅立ってしまったものだから、どういう大人になっていくかは彼(作品)の問題。展覧会も距離を持って見ている。すごくフレッシュな新しい体験をさせてもらった」などと展覧会への思いを語った。

 神木は事前に展覧会を内覧した。新海監督の大ファンでもあり「すてき。言葉が出なかった。真っ白な壁に展示物があり、監督の作品、監督自身というイメージが強かった。ずっといたい空間…天井の高さも生かされた配置だとすごく思った。監督の作品、地元を知ることが出来る、たまらない空間」と絶賛。音声ガイドについては「お相手を見ながら説明するのとわけが違う。人それぞれ居心地がいいリズムがある。心の中でモヤッとするリズムになっちゃいけない。感情が入りすぎてもダメ…難しかった」と収録を振り返った。

 国立新美術館は、劇中で神木が演じた瀧が、先輩の奥寺ミキ(声・長沢まさみ)とデートしたことで、ファンの間で“聖地”として知られる。新海監督は「東京の象徴、しかも風景として圧巻されてしまうような建築物で、高校生のデートとしては少し敷居の高い場所。高校生である瀧君のキャラクターを描くために選んだ。(映画の公開から)1年と少したち、展示していただく機会は想像すらしていなかった」と喜んだ。

 展覧会は、新海監督の商業映画デビュー作「ほしのこえ」から現在までの製作の軌跡を絵コンテ、設定、作画、美術、映像や造形物など1000点の資料を通じて紹介。1月で10周年を迎える国立新美術館で、現役アニメーション映画監督の展覧会を開くのは初めて。同監督は「日本の中でアニメーション映画の受け取られ方が、少し変わってきたのかな。先輩達の流れの、末端に僕らの作品もある」と時代の変化を指摘するとともに先達への感謝の思いを口にした。

 その上で「200、300人の映画作りの戦いを展示していただいた。スタッフとのコミュニケーションの過程、観客とどうコミュニケーションを取るかの過程を見ていただく機会はない。来場者の方に入っていただき、僕たちがどうコミュニケーションを取ろうとしていたかを見ていただきたい。この先も作品を作っていくと思う。(展覧会での観客の反応が)僕らに伝わると、また新しい作品を作っていきやすい。会話をするつもりで見に来ていただくと幸せです」と笑みを浮かべた。【村上幸将】