上方落語協会の総会が26日、大阪市北区の天満天神繁昌亭で開かれ、03年の初任から歴代最長8期目に入っていた桂文枝会長(74)が、今期会長選を「辞退」することを正式に表明した。

 「やりきった。晴れやかな気持ちです。前回(一昨年)に、今回で最後と言って、やはり体力的にもしんどいものがありますから、次の体制をサポートするにしても、元気なうちに退きたいというのがありますから。迷いはなかった」

 03年から会長職に就く文枝は、一昨年3月の前回選挙時に8期目へ再選され、同職が承認された同6月の理事会後に、後進に道を譲るとして、今期で勇退を協会員の前で告げていた。

 ところが、文枝が悲願として継続してきた神戸の劇場「喜楽館」が今年7月開館へずれ込み、昨年夏の富士登山で山頂落語会を成功させ、体力的な自信を回復。一時は9期目への意欲も見せていたが、昨年末に不倫騒動が起こるなどし、心労も重なって、当初の意向を優先。周囲から、会長続投を望む意見に心は揺らいだものの、会長選からは降りる決心を貫いた。

 「(月亭)八方幹事長から『会長のおかけです。今日までお疲れさまでした』と言葉をもらい、幸せでした。確かに(続投を)望んでくれる声はありましたが、やはり僕(の決心)は(変わらず)」

 8期12年の間には、若手から不安の声も上がっていた「喜楽館」の開館をめぐってなど、協会内で意見が分かれることもあった。それも、文枝会長ならではの先導力で協会をけん引してきたことに「独断でやってきたこともあった。その点は、皆さまに申し訳なかったとおわびもしました」と話した。

 文枝会長は就任後、06年には戦後初の定席「天満天神繁昌亭」をオープンさせ、上方の悲願を達成。協会を公益社団法人とし、今夏には、神戸にも第2の劇場を開くなど、上方落語の隆盛に尽力した。

 またこの日、文枝の弟弟子で、副会長の桂きん枝(67)は、総会の中で、互選制の選挙方法を変更する動きがあったことについて「公益社団法人のあり方として、勝手に(立候補制や、指名制に)方法は変えられないことが分かったので、今回は従来通り。次回以降は新体制に考えてもらう」とした。

 このため、文枝会長が「辞退」を申し出ても、最多得票にいたる可能性も残っており、これについては「会長は強い口調でおっしゃっていたので、それ(得票)はないでしょう」と語った。

 会長職は、毎年3月下旬に全協会員による会長候補選で、会長候補を選出し、5~6月の理事会での承認を経て、正式に決定しているが、今年は候補選を4月に開催する予定。5月に予定される理事会を経て、新たな会長が決定する。