人間国宝だった父の故桂米朝さん(享年89)が、マネジャーとともに立ち上げた「米朝事務所」の社長に就任した上方落語家、桂米団治(59)が26日、大阪市内で専務取締役の桂ざこば(70)、常務取締役の桂南光(66)とともに会見。「新しい風を起こすために、ある種、みこしに乗ってみようと」などと思いを語った。

 金びょうぶの前にざこば、南光と、代表取締役会長に就いた今井浩前社長を従え、さわやかな笑みで着席した米団治。冒頭、あいさつを始めようと立ち上がった瞬間、いきなり椅子を倒して照れ笑い。ざこば、南光も大笑いしながら「いきなりか!」とつっこみ、大爆笑で“社長就任会見”がスタートした。

 「米朝がはなし家のために、と、立ち上げた米朝事務所ですが、米朝も亡くなり、新しい風を起こさないといけないな、と。在阪において、どこの芸能事務所も芸人が社長というのはないんですが、ざこば、南光の両お兄さんが後押ししてくれるので、私でよければ、と拝命いたしました」

 米朝事務所は74年、米朝さんのマネジャーだった田中秀武氏(前会長、16年退任)が社長に就き、発足。米団治が物心ついた頃から内弟子修業をして自宅にいたざこば、故桂枝雀さんの弟子だった南光らが役員に入り、運営してきた。

 昨年11月の役員会で、新体制の提案があり、米団治が社長に就く方針になり、今年1月、株主総会で正式に決まった。

 おりしも、吉本せいが起こした「吉本興業」の物語をモデルにした朝ドラ「わろてんか」が放送されており、米団治は「吉本せいさん、個人の名前があんな大きな事務所になった。ひょっとしたら、米朝の名前ももっと大きくなるかもしれない。米朝ブランドをどんどん輩出していく、そのパイプ役になれれば」と考え、社長職を引き受けた。

 ただ、あくまでも「芸人」を本職とするスタンスは変えず「芸人の目から見て、後輩たちの思いを仕事につなげていきたい」。落語会の全国ツアーを始めた米朝さんにならい「埋もれている才能、武器を持ったはなし家を全国に広めて、あちこちで落語会を開いていきたい」と話す。

 自身の高座活動に加えて「若手の売り込みも、僕の仕事です。やっていきます」と、米団治“社長”は決意を口にした。

 任期は原則1年だが、不具合がなければ、自動更新になるといい、ざこばは「好きなようにやってくれたらええ。師匠(米朝さん)に着いてここまで来て、今度はその息子、いずれは孫…。おれは(本名の)中川家に着いていくだけや」と全権を米団治に委任。

 南光は「腹くくって、やるんやから、たいへんやと思うけど、それも使命。まあ、(米団治の)カレー(グッズ)ばっかり増やしたり、暴走せんように常務として、しっかり見張っておきます」と、エールを送りつつ支援を約束した。