累計発行部数120万部を突破した、こうの史代氏原作の漫画「この世界の片隅に」(双葉社)がTBSでドラマ化され、主人公の北條(浦野)すずを松本穂香(21)、すずの夫北條周作を松坂桃李(29)が演じることが5日までに決まった。「この世界の片隅に」は7月から放送され(日曜午後9時)、松本はゴールデン帯の連続ドラマで初めてヒロインを演じる。このほど、都内の緑山スタジオのオープンセットが取材陣に公開された。

 「この世界の片隅に」は、太平洋戦争下の不安定な時代の中、広島県の江波から呉市に嫁いだすずが、嫁ぎ先の北條家で暮らす、かけがえのない日々を描く。オーディションで約3000人の中から選ばれた松本は「正直、うれしいという感情よりポカーン…信じられない気持ちでいっぱい。オーディションの時から、すずさんのことを知りたい…やるんだという気持ちで臨んだ。ジワジワと、やるという気持ちが出てきています」と、すず役を勝ち取った当時の心境を語った。

 今回が初共演となる松坂の印象を聞かれると「周作さんにしか見えない。周作さん、誰なんだろうと…松坂さん、絶対に合うと勝手に、本当に思っていて。(松坂に決まったと)聞いた時…お母さんと『ピッタリだよ』って話していて」と言い、ほおを赤らめた。

 その言葉を聞いた松坂は「キャスティングしてくれてありがとうございます。これで決まったのかな?」と笑った。松本の印象を聞かれると「お会いする前に衣装合わせがあって、写真を見た時、ピッタリ…すごいなと思った。実際、台本読みでお会いして雰囲気がピッタリだなと。『緊張します』と言っているけれど、表に見えにくい…肝の据わってる女性なのだと感じていますね」と評した。

 松本は出演が決まると、舞台の広島に向かい、すずが生きた江波や呉を肌で感じた。さらに「(すずは)普段から、げたを履いて生活している方なので、私もわんこを散歩する時、買い物に行くとき、島に撮影に行っていた時、履いていました」と平素からげたを履くよう心がけているという。大好物の洋菓子も一切、食べないようにして料理、裁縫を特訓するなど、5月8日のクランクインに向けて、すずに近づくための役作りに日々、真摯(しんし)に取り組んでいる。

 その松本に最強の“援軍”が、すずが生活した呉からやって来た。1月に制作サイドが、呉市の協力の下、ドラマに協力してもらえる古民家を募ったところ、1926年(大15)に建てられた、築94年の家が見つかった。3月中旬に解体し、4月から都内の緑山スタジオ内のオープンセットで移築を開始。北條家のシーンの撮影を行う。すずが生きた時代に建っていた古民家を前に、松本は「オープンセットを初めて見て…すごかったですね」と感激した。

 松坂も「再現度というか、原作の家の造りだったり、木の植え方だったり…きっとここに防空壕(ごう)が出来るんだろうなと。美術スタッフが広島の方で、作品の愛し方が細かいところまで出ている。身の回りのものが(演じる)世界に連れて行ってくれる要素。これだけ愛されているものだとポンッと入っていける。心強い」と喜んだ。

 音楽家の久石譲氏(67)が94年のフジテレビ系ドラマ「時をかける少女」以来、24年ぶりに民放連続ドラマの音楽を担当することも決まった。松本は「まだまだ経験がない中で、素晴らしい方々と一緒にやらせていただく…どんなことが起こるんだろうと、めちゃくちゃワクワク。知らないものが見えるんだろうな…感じたことを元に頑張りたい」と胸を躍らせた。そして「このドラマを見た方に、それぞれの大切なものを考えるきっかけになれば。戦時中の話…正直、大変なこともあると思いますが、すずさんのように明るく前向きに頑張りたい」と笑顔で意気込んだ。【村上幸将】