是枝裕和監督(55)の「万引き家族」(6月8日公開)が19日夜(日本時間20日未明)に開かれた第71回カンヌ映画祭授賞式で、最高賞パルムドールに輝いた。世界3大映画祭の中でも最高峰カンヌで日本作品が同賞を受賞したのは、97年今村昌平監督の「うなぎ」以来、21年ぶりの快挙だ。

 是枝監督は、5度目のコンペティション部門で、ついに最高賞パルムドールを受賞した。発表の瞬間、信じられないという表情を浮かべ、壇上でトロフィーを受け取ると、「うわぁ」と感激の声を漏らした。

 「さすがに足が震えています」とスピーチを始めた是枝監督。「この場にいられることが本当に幸せ。今回いただいた勇気と希望を、スタッフとキャスト、若い映画の作り手と分かち合いたい」と喜びを語った。審査員長で女優ケイト・ブランシェットは「演技、監督、撮影など、すべての要素が総合的に素晴らしかった」、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督は「魂をわしづかみにされた」と絶賛した。

 上映後の評判はかなり高かった。毎日発刊される業界紙の星取表はトップクラス。街行く人に声を掛けられたり、サムアップのポーズを送られた。授賞式の2日前、是枝監督は「期待感が残ったままここにいられるのは幸せ」と話していた。

 是枝監督は常々、賞は目標にするものではないと言っているが、パルムドールは特別だ。「まさか自分がもらえる賞だとは思っていなかった。僕自身のキャリアにとっても大きなステップアップとなるでしょうし、これであと20年くらいは作り続けたいなという勇気をもらった」。

 授賞式後は、会見や取材に追われた。トロフィーを持ち続け「すごく重くて腕ががちがち。別の意味でも本当に重たい。これをもらった監督として恥ずかしくないものを作らなければという覚悟を、また新たにしています」と、早くも次を見すえた。さらに「家族ドラマの作家というとらえ方が強くなってしまうかもしれませんが、さまざまなジャンルにチャレンジしたい」と語った。

 万引と年金を頼りにする一家の日常と秘密を描いた作品。これまで是枝作品は、04年「誰も知らない」で柳楽優弥が男優賞を、13年「そして父になる」が審査員賞を受賞している。

 是枝監督は23日に帰国予定。