若手歌舞伎俳優の尾上右近(26)が先日、主宰する自主公演「研の会」(8月26・27日、東京・国立小劇場)、主演舞台「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」(7月6~22日、新宿紀伊国屋サザンシアター)の会見を都内で行った。

 同じ場所で2つの違った公演の会見ということで、最初の「研の会」は羽織、はかま姿だったが、10分間の休憩をはさんで、初の現代劇主演となる「ウォーター」にはカジュアルなジャケット姿に着替えて登場した。

 4回目となる「研の会」では「恋飛脚大和往来」「二人椀久」に挑戦する。どちらも中村壱太郎が相手役を務める。「恋飛脚」は坂田藤十郎が演じた時に1カ月間、毎日舞台袖で見ていたという。「あこがれの役で、泣きながら拝見していました。千秋楽にごあいさつに伺ったら、『今度やる時は、あなたに教わらないとね』と言ってくださいました。男の悲恋2題で、やりたかった作品。自分の少ない恋愛経験を生かして演じたい」。

 現代劇初挑戦となる「ウォーター」は小さい頃にトラウマを抱え、イラク戦争で負傷した青年の再生を描いている。「何しろ初めてのことづくし。初翻訳劇、初現代劇、初主演は、困難を極めるということを覚悟の上です。今回の舞台が、自分の糧になるということと、危険な道に進みやすい自分の性格を受け入れた上で、乗り越えなければいけない試練と思っています。恥をかくことが好きなので、たくさん恥をかけるのがうれしく思っています」と初々しく話した。

 右近と言えば、スーパー歌舞伎2「ワンピース」のルフィー役で注目を集めた。「自主公演で舞台の真ん中に立つ経験をしていたのが生きたと思う。今回もう1度、まっさらの気持ちに戻って臨みたい」。同世代の若手歌舞伎俳優は役にも恵まれ、それぞれ活躍している。右近は「ライバルというより、一緒に戦っている仲間という感覚です」と話した。将来の歌舞伎界の頂点をめぐるレースは、今から始まっている。