関東信越厚生局麻薬取締部は12日、コカインを摂取したとして、麻薬取締法違反(使用)の疑いで、ミュージシャンで俳優のピエール瀧(本名・瀧正則)容疑者(51=東京都世田谷区)を逮捕した。逮捕容疑は12日ごろ、東京都内やその周辺でコカイン若干量を摂取した疑い。「間違いありません」と容疑を認めている。

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ピエール瀧容疑者を逮捕したのは通称「マトリ」こと、関東信越厚生局麻薬取締部だった。元厚生労働省麻薬取締官の高濱良次氏が日刊スポーツの取材に応じ、マトリの捜査や、コカインという薬物について語った。

麻薬取締官として数多くの薬物事件を担当してきた高濱氏は「芸能人が捜査対象になる場合、さまざまな問題が起こる可能性が高く、慎重に、見極めに時間をかける」と解説。さらにコカイン使用の場合、一般的には薬物が体内に残るのが数日間とされるため「一歩間違えると、尿検査で陽性にならない」というリスクもある捜査だったと思われるという。

マトリの捜査については「できる範囲でがっつりと尾行し、本人の行動を見る」のが特徴で「自宅に薬物があるか、体内にある可能性が高いと判断した時に家宅捜索に入ります」。その時は、8~10人ほどの人数で行くことが多いという。

その上で、今回の逮捕について「決定的な証拠があったのだろう。家宅捜索でコカインは出なかったが、尿検査で陽性になったことに加え、吸引する際に使ったとみられるストロー状に巻かれた外国の紙幣が押収できたということで、使用を裏付けることができる。今後の捜査に自信が持てるのではないか」と分析した。瀧容疑者の今後の取り調べについては「どこで入手し、いつから使っているか。そしてなぜ、コカインなのかを取り調べて、そこから常習性や入手先を調べていくのでは」と話した。

コカインについて、高濱氏は「欧米では『薬物の王様』といわれており、覚醒剤に比べ高額で、一種のステータスのようになっている」と解説した。コカインは摂取後、約15分で効果が出て、30分以内で消えてしまい覚醒剤に比べ持続性が短いため、使用量が増え、結果的に割高になるという。

◆コカイン コカインは違法薬物の中では高価なこと、海外の著名芸能人の使用が判明してきたことなどから「セレブドラッグ」とも称される。海外では93年、米俳優(当時23)が急性麻薬中毒で死去、遺体からコカインなどが検出。米女性歌手(同48)も12年に浴槽で死去後、コカインが検出された。日本では勝新太郎さんが90年、ホノルル空港でパンツの中にコカインを不法所持した疑いで現行犯逮捕され会見で「もうパンツはかない」と話し話題となった。

コカインは、おもに南米で嗜好(しこう)品として使われてきたコカの葉から精製され、一時的多幸感や陶酔感が得られるが依存性が極めて高い。大量摂取すると体を虫がはい回るような幻覚や全身けいれんを引き起こし死亡するケースもある。現在、国内の末端価格は1グラム2万円程度とされ、警察当局による押収量や摘発者も近年増加。背景には、危険ドラッグの規制強化があるとの見方もある。