38歳、独身の女優松下恵が米国に留学し、思い悩んできた結婚、出産、人生について米国人にぶつけた日々を1本の映画にまとめた「アラフォーの挑戦 アメリカへ」(すずきじゅんいち監督)が6日、東京・新宿K'シネマから全国で順次、公開される。松下が日刊スポーツの取材に応じ、結婚、出産への思いを語った。3回目は、松下が映画を作る中で芽生えた映画プロデューサー、監督への興味について、今後の可能性も含めて語った。【聞き手・構成=村上幸将】

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松下は、女性が結婚しないことで“人並みではない”などと見られる日本の風潮が重圧になっているとも語る。

松下 結婚していないと、一人前に見られないとか、変な目で見られたりとか、周りがドンドンするから焦っちゃうということはありますよね。米国のプロデューサーが「日本では、そんなに悩んでいる女性が多いのね。米国は、もう少し自由よ」と言ってくれた。

その上で「(自分は)もう37歳だっていつも思っているんです」と語り、日本ではアラフォーまで結婚しないことで「エイジハラスメント」に苦しんでいることも吐露する。

松下 米国は年齢で人をジャッジしない。私は、日本ほど年齢で人をジャッジする国はないと思っています。例えば米国の新聞は年齢を入れないですし、履歴書にも年齢でジャッジしないために生年月日は書かないと言いますもの。私にとって今回の映画を作る中で1番、大きかったのが、年齢にこだわらないこと。米国で、幾つになってもチャレンジ出来るチャンスがあると思えたので、帰国して自分の年齢で落ち込むことがなくなりました。それまでは、この年齢だから結婚しないとおかしいとか、子供がいないといけないと、年齢がすごくネガティブだったですけど、そうじゃなくなりました。そのことを日本の女性に伝えたい。モヤモヤしている子たちが見て、私は悪くないんだと思ってくれて…癒やしになる映画だといいですね。少しでも明るい気持ちになるのが1番うれしい。だって、答えもゴールもなくて、ずっと悩みは続いていくんですけど、少しでも自分は悪くない、いろいろな選択肢はあるんだと。

出演するだけでなく、企画立ち上げから映画を作っていく中で、プロデューサー的な感覚も芽生えた。

松下 私は企画としてスタッフを集めるところから携わっていたので、映画が出来ていく過程をずっと見て来られたのは、ものすごく勉強になりました。映画って、すぐ実現するものじゃないことも分かっていたので、どうなんだろう、映画になるのかな、クランクインできるのかな? という不安の中、物事が1つ1つ奇跡的にうまく運んだ。

撮影後の編集にも関わり、“難産”の末に映画は公開にこぎ着けた。

松下 帰国してから編集もあったし、劇場公開が決まるのはどうなるんだろう…と思いながら、公開にたどり着いたのは奇跡だと思いますね。やって良かったですよ。もう、目まぐるしい人生の変わりようです。人から見たら何も変わっていないけど、私の内面的には、まず映画を作ったということ自体が、すごく自分を成長させてくれたし。その内容自体がフィクションではなく、私自身を描いてるので、私が自分自身のことを深く見詰めないと言葉にならないし、このインタビューだって何を話して良いか分からない。それを毎日、毎日、ずっと繰り返していることで、こんなに自分を見つめ直す時間をいただいたことに感謝していますね。今年にかけての1年に、感謝しています。

今回、企画段階から関わった映画に出演し、途中でテーマを留学からアラフォー独身女性の悩みへと大きく転換するなど、プロデューサー的な立ち位置まで経験し、改めて仕事が好きだと実感した。

松下 やっぱり、仕事が好きなんですかね。ここまで(結婚を)してこなかったのって…。仕事の方がやっぱり楽しいし、何かを表現する時の1人になりたい気持ちもあるじゃないですか。相手と何でもかんでも分かち合いたいわけじゃなくて、自分だけが持っている部分を大事にしてこないと表現できなかったりするから、何だかんだ、やっぱりそっちを優先してきた結果なのかなと思います。今も、そうなのかなと思う。

そんな松下に「日本はアラフォーの独身女性にとって、生きにくい国、社会か?」と問いかけてみた。

松下 私自身が社会人…会社にお勤めしていないので、そういう中での皆さんの目は感じたことはないです。同じ世代の女優さんで、独身で結婚したくて悩んでいる子は、ものすごい多いです。みんな同じようなシチュエーションで、みんな試写を見に来て、ものすごい泣いてくれたりして。やっぱり、母親のプレッシャーも強いし、いい出会いがないんですよね。どうしてって思うくらい、きれいな女優さんたちが、何でこんなに悪い男の子たちしか…と思っちゃう。

手塩にかけた映画が、ついに公開された。今後は、どこを目指して進んでいくのだろうか?

松下 女優業ということに限らず、物作りの楽しさを知ったので、やっぱり自分で何か企画して続編を作るとか、もっと自分から出てくるもので、伝えていきたいですね。女優は、やっぱり与えられた台本を読んで芝居をして演じますけれど、そもそも私から出てくる言葉とか、思いで新しいことをやっていきたいとは思いますね。プロデュースはしたいですね。続編みたいなこともやりたい。製作も向いているかもしれないですね。プロデューサーは、もしかしたらニコニコと皆さんとやっていく方が、むしろ大事かもしれないので。そちらのタイプなのかな? ということに気付かされた映画かもしれないですね。

最後に、観客への思いを語った。

松下 お客さんの入り次第ですけど、全国で順次公開して欲しいですね。地方では東京より、皆さんはもっと早く結婚しちゃうでしょうし、東京とそれ以外の地域では感覚も違うと思うから。みんなで見に行こうというより、ちょっと落ち込んじゃった時に、1人でコッソリ映画館に見に来て欲しいなという感じがあります。1人でじっくり見て、癒やされたら…カウンセリングみたいな映画になると良いですね。男の人も、同じように寂しさを抱えている…女性から見ると、何でプロポーズしてくれないの? くらいの感じですけど、そうでもないんだなと。そんな男性にも見て欲しいですね。