ラサール石井(63)が人気落語家柳家喬太郎(55)との二人会「きょんと石井」を、今月29日午後6時半から東京・新宿の紀伊国屋ホールで行う。

石井は、明大落語研究会出身のコント赤信号の仲間小宮孝泰に誘われて10年前から落語を始め、小さな劇場で落語を披露してきた。熱海五郎一座で共演する春風亭昇太に所作などの基本を教わったという。「同じネタでもやる人によって違って聞こえるし、直前までネタを決めず、ジャズの即興のようにやる。喬太郎さんは通常は40分ほどの『死神』をカットして15分から20分でやるけれど、それもすばらしい。落語家は縦横無尽ですごい」。

2年前には、井上ひさし作のこまつ座公演「円生と志ん生」で、昭和の名人である古今亭志ん生を演じた。「落語をやっていたから、キャスティングされたと思う」。昨年、石井が演出した、同じ井上ひさし作のこまつ座「たいこどんどん」に喬太郎が主演したことをきっかけに、今回の二人会になったという。

石井の持ちネタは「替わり目」「錦の袈裟」など10ほどだが、「紀伊国屋ホールは、舞台の人間にとって聖地のような劇場。そこで落語なんてめったにできない。ネタおろしでやります」。選んだのが、故桂米朝さんも得意とした「鹿政談」。奈良を舞台に死んだ鹿をめぐる名裁きを描いた噺で、「タンカが格好いいし、大阪生まれだから、関西弁も入ってやりやすいんです」。マクラでは奈良公園で好物の鹿せんべいを売る店に、なぜ鹿たちが近寄ってこないのかという謎を解説するという。

8月には寄席の浅草演芸ホール昼の部で21日と22日に出演する。以前、新宿末広亭の余一会(31日だけの特別興行)に出たことはあるが、通常の寄席興行は初めての出演。「どんな風になるか楽しみ。昇太さんも芝居をやることで、落語がうまくなったと言っていたけれど、僕も落語をやることで、芝居も変わってきた。役者としても勉強になる」。二人会では喬太郎は2席を演じ、石井は昇太と同じ呉服店で新調した着物で高座に上がるという。俳優をしつつ、舞台の演出をしたり、脚本も書くなど多彩なラサールだが、「落語家」という顔もすっかり板についてきたようだ。