「キノウチ」と「キウチ」どっちがタイプ? 男子校に通っていた高校生の頃、友人たちとの暇つぶしにそんなことを話した覚えがある。

キノウチとはアイドルとしてデビューしたばかりの木之内みどりさん(62)。現竹中直人夫人である。キウチとは18日に「急性心臓死」で亡くなった木内みどりさん(享年69)だ。

木内さんの方が7歳上で、その後の足跡からすると、愛らしいアイドルと個性派女優という対照的なキャラがイメージされるが、当時の木内さんは「ドラマに主演する正統派」の印象が強く、いわば憧れのお姉さん。仲間内の「人気」は拮抗(きっこう)していたと記憶している。

芸能記者になった80年代には、すっかり演技の幅を広げていて、日本テレビ系「天才たけしの元気が出るテレビ!」で存在感を示したり、TBS系「ザ・ベストテン」で黒柳徹子の代役として司会を務めたりした。器用でそつのない人だと思った。

私生活では86年に、西武百貨店常務で、後に同社社長、参院議員となる水野誠一氏(73)と結婚。当時は「玉の輿」と話題になった。が、後にあるインタビューで「暮らし始めると玉の輿どころか火の車。サラリーマン重役のお給料は世間のイメージとは全然違う」と心境を明かしている。庶民感覚からは確かにちょっと離れているかもしれないが、それなりの生活感も漂わせた。

最近では、樹木希林さんの最後のプロデュース作品となった「エリカ38」に出演。女詐欺師を演じた。製作費に限りのあるこの映画に「少しでもリアリティーを」と、自らピン札で100万円を用意。これを劇中で効果的に使って希林さんを感激させた。きっぷのいい、心配りの出来る人だと思った。

一方で、福島原発事故を機に「脱原発」を訴えていた。今年7月には山本太郎氏の「れいわ新選組」の演説会で司会を務めるなど、想像以上に行動的な人だった。

個性的な女優さんは少なくないが、時代ごとに少しずつ「顔」を変え、はた目にそれなりの「納得感」を覚えさせる人はそんなにいないと思う。文字通りの急死。70歳代の木内さんも見たかった。