テレビの音楽番組で注目された道産子が、プロ歌手としてスタートを切った。札幌大3年の戸子台ふみや(20)は5月13日に日本クラウンからシングル「泥酔い酒」でメジャーデビュー。「見た目はおじさん、中身は大学生」のキャッチコピーを引っさげて演歌界に乗り込む。

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おじさん顔の新人が演歌界で一花咲かせる。酒に溺れる人々の心情を歌い込んだ王道路地裏演歌「泥酔い酒」でデビューした戸子台は20歳の大学3年生。「あんまりお酒を飲まないんで歌詞を理解するのに時間がかかりました。(曲を)頂いたときはこのド演歌を歌えるのか心配にもなりました」。初々しさを漂わせながらも、卓越した歌唱力を土台に約半年間かけて仕上げたデビュー曲で演歌ファンの心を引きつける。

「見た目はおじさん、中身は大学生」。テレビ番組やイベント出演などでアマチュア時代から愛用する強烈なキャッチコピーは自ら考えた。「40~50歳ぐらいに思われますね」。家族といたら「誰がお父さんかわからない」と言われ、大学では教授と間違われることもある。それでも「年配の方はもちろん、同年代の若い方にも演歌の良さを伝えたい」と意気込み、自身の顔を「最大の武器です」と懐深くどっしりと構える。

きっかけは偉大な先輩との出会いだった。母方の祖父野村勝隆さん(76)が経営する会社のパーティーに細川たかし(69)が来席。小学3年の戸子台は弟とともに「北酒場」を目の前で歌った。演歌界の大御所から初めて人前で披露した歌を「上手だったね」とほめられ、演歌に目覚めた。音楽の専門的な教育は受けていないが演歌を聴き込み、高校時代には「NHKのど自慢」や「THE★カラオケバトル」(テレビ東京系列)に出演。貫禄たっぷりに歌う姿が評価され、事務所の目にとまった。

新型コロナウイルスの影響で活動が制限される中でのデビューにも「僕の夢を応援してくれていたおじいちゃん、おばあちゃんはすごく喜んでくれた」と戸子台。祖父母思いの孫は「将来は細川さんともご一緒したいし、最終的には紅白歌合戦にも出場したい」。弱冠20歳の“おじさん”が演歌道を歩み始めた。【浅水友輝】