10月29日に自動車運転処罰法違反(過失傷害)と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕され、同30日に釈放された俳優伊藤健太郎(23)が主演した映画「十二単衣を着た悪魔」(黒木瞳監督)配給のキノフィルムズは31日、予定通り11月6日に公開すると発表した。社長を務める木下グループの木下直哉CEOは文書を発表し、伊藤本人が釈放後、直筆の謝罪文を送ったことを明らかにした。

木下社長は文書の中で「逮捕されてからの数日間、事実確認をしながら協議を重ねて参りましたが、釈放されたことを受け、予定通り全国の劇場にて公開させて頂く運びとなりました」と説明。「決定に対しましてはさまざまなご意見があることと存じますが、釈放後に本作関係者への自筆の謝罪書面を弊方が受け取り」とつづった。伊藤は30日午後8時10分ごろに警視庁東京湾岸署から釈放され、謝罪後、同8時20分前後に車で同署を出た後、謝罪文を書いたとみられる。

「十二単衣を着た悪魔」は、黒木瞳(60)が監督を務めた長編映画2作目で、自身が番組を持つニッポン放送に張られた伊藤のポスターを見て、一目ぼれして主演に起用した意欲作だった。それが9月に、出演した伊勢谷友介被告(44)が大麻取締法違反容疑(所持)で逮捕、起訴された。さらに公開を8日後に控えた10月29日に今度は主演の伊藤が逮捕される前代未聞の事態に陥った。

木下CEOは、伊勢谷被告の逮捕時と同様「個人の罪と作品は違うという弊社の見解のもと、本編の再編集は行わずに、そのままの内容で上映をさせて頂きます」との判断を下した。ただ脇役とは違い、全編にわたって出演する主演俳優が、しかもひき逃げという重大犯罪を犯した上で、再編集をせず予定通りに映画を公開するという今回の判断は、業界の今後に一石を投じるものになりそうだ。

◆事件メモ 伊藤は乗用車を運転していた10月28日午後5時45分ごろ、東京都渋谷区の外苑西通りでUターン時にバイクと衝突。20代男女2人にけがを負わせ、現場を立ち去った疑い。女性は左足骨折の重傷、男性は左腕打撲の軽傷を負った。翌29日警視庁に逮捕され30日、留置先の東京湾岸署から釈放。同署前で目を潤ませ「一生かけてつぐなっていきたい」と被害者らに謝罪した。「気が動転した」という趣旨の供述をし容疑を認めているという。警視庁は任意捜査に切り替え調べる方針。