細田守監督(53)が6日、都内で行われた新作アニメ映画「竜とそばかすの姫」(16日公開)完成報告会見で、世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)の「カンヌ・プルミエール部門」出品を機会に、世界の映画人、関係者に作品をアピールしたいと“野望”を語った。

「カンヌ・プルミエール部門」は、これまでの作品が高く評価されている監督の注目すべき新作を集めた、カンヌ映画祭に新設された部門で「竜とそばかすの姫」は13本中、日本から唯一、選出された。

細田監督作品では、18年「未来のミライ」が、カンヌ映画祭期間中に併設して開催される、フランス監督協会主催の「監督週間」で上映されているが、同映画祭公式部門への選出は初めて。細田監督は質疑応答で「世界の映画人、映画関係者に、作品をどう見てもらいたいか?」と聞かれると「映画祭って、つい出品されて光栄って言う。それ以上に、今、世界で何が起こっているか、何が面白いかを、映画を通してみんなで見せ合う場だと思うんですよね」と語り出した。

細田監督は会見の冒頭で「20年前に『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』という映画を作った。その次に09年に『サマーウォーズ』。そして今回…3度、インターネットの世界の映画を作った」と語った。その上で「インターネットの世界自体、25年くらいしかたっていない。その中で、インターネット世界と現実の関係性を映画にしてきたということで言えば、世界の監督の中でも僕は特別な存在と言うか、しかもインターネットを肯定的に描く監督としては、恐らく世界で僕1人だと思う。頑張って表現していきたいところ」と語った。

質疑応答では、その思いを踏まえ「僕が今、日本にいて、日本から見えるインターネットと現実の関係性みたいなものが、すごく面白いと思っていて、それを映画にして、そういうことを通して世界がどんな風に、どんな変化が起きているかを世界の人と話し合って、答えを照らし合わせながら、この先の未来に何が起こるか、これからの世界がどういう方向に向かっていくのかを確かめ合う、意義のある場所だと思う」と、カンヌ映画祭で世界の映画人と映画を通して議論したいと熱望した。さらに「カンヌのジャーナリストの人は、鋭い質問を投げてくださるので、すごく勉強になるし刺激になる。考えさせられる貴重な機会になる。世界の映画人の皆さんにアピールしてきたい」とも語った。

フランスでは、カンヌ映画祭のアニメーション部門が1960年(昭35)に独立した、アヌシー国際アニメーション映画祭も開催されており、その権威は高い。カンヌ映画祭とアヌシー国際アニメーション映画祭の違いを聞かれると、細田監督は「アヌシーは、やっぱりジャンルとしてのアニメーション専門の映画祭として、カンヌ映画祭から独立したというのがある」と説明。その上で「カンヌ映画祭は、要するに作家主義の作品を選んでいて、その中で手法はあえて問わないという姿勢。アニメーションだから選んだのではなく、たまたま、こいつが作っている手法がアニメーションだったということ。アヌシーに選ばれるのも光栄ですがカンヌに選ばれるのも光栄」と、実写、アニメを問わず、カンヌ映画祭が作品を選んだことを喜んだ。

カンヌ映画祭では、日本での公開前日の15日午後8時(現地時間)からワールドプレミアが行われ、細田監督が登壇予定だ。【村上幸将】