「人形の家」や「手紙」で知られる作曲家で編曲家の川口真(かわぐち・まこと)さんが20日に敗血症のために死去していたことが27日、分かった。83歳だった。

葬儀は近親者のみで行った。喪主は長男真太郎さん。

関係者によると、一昨年末に「息切れがする」と自ら病院で検査を受けた。肺炎と診断され、すぐに入院した。その後、新型コロナウイルス感染症が広がり、親族らも面会できなくなった。その間、落ちた体力を戻すため、リハビリなども積極的に受けた。電話をくれた関係者には「養老院に入ったんだよ」とジョークを言うほどだったが、1度も退院することなく逝ったという。

神戸市生まれで、岡山市で育った。東京芸大で作曲を学び、在学中から越路吹雪のバックバンドのピアニストで活動した。実践で音楽を学べるからと、東京芸大を中退したが、その後、再び受験して東京芸大に進学。こちらも中退するという異色の経歴を持つ。

その後、ミュージカルで編曲の仕事を始めた。作曲家としては63年の弘田三枝子さんの「人形の家」がヒット。70年に西郷輝彦の「真夏のあらし」で第12回日本レコード大賞作曲賞を受賞した。その後もヒットを連発した。同年に由紀さおりの「手紙」、73年に夏木マリの「絹の靴下」、74年に金井克子の「他人の関係」。さらに75年に内藤やす子の「弟よ」、76年には新沼謙治の「嫁に来ないか」などをヒットさせた。阿久悠氏やなかにし礼氏といった人気作詞家とコンビを組んだ。

阿久氏と組んだ特撮ドラマの「ウルトラマンタロウ」や「ウルトラマンレオ」の主題歌は、今も歌われている。CMソングでは明治のお菓子「カール」などを手掛けた。

編曲家としても山口百恵さんの「いい日旅立ち」「しなやかに歌って」やテレサ・テンさんの大ヒット3部作「つぐない」「愛人」「時の流れに身をまかせ」。さらにはザ・ドリフターズの「ドリフのズンドコ節」など、さまざまなジャンルで数多くのヒット曲を生んだ。

寡黙な人で、音楽番組などに積極的に出る方ではなかったが、曲作りには厳しかった。音楽関係者は「川口さんは大作家なのに、歌は全然歌えなかった。でも、作曲は鼻歌でもできるが、編曲は知識と技術に裏打ちされた感性がなければできない。川口さんは音楽界の職人、技師のようだった」と話した。ゴルフが得意で、数々のコンペで優勝する腕前だった。09年から日本作曲家協会の理事長も務めた。

コロナ禍の状況を見て、来年にお別れ会などを開催する予定という。