落語家三遊亭とむ(37)が13日、東京・有楽町朝日ホールで落語家10周年記念の「三遊亭とむ大独演会」を開いた。

一昨年10月に東京・丸の内の東京国際フォーラムで独演会「ラブファントム2019」を開いて以来、2年ぶりの大会場での独演会。

ダジャレイリュージョンと題して、女性マジシャンコンビのステファニーと組んで、剣刺しや人体浮遊、脱出のパフォーマンスを見せた。そして「荒大名の茶の湯」「心眼」の2席を披露した。

公演を終えたとむは「軽快なトークと軽率なダジャレでしたが、イリュージョンは思った以上にハードでした。『最後はアドレナリンが出て何とかなる』とアドバイスを受けましたが、思った以上に体を使いました」と振り返った。

落語界でイリュージョンと言えば、11年に亡くなった7代目立川談志(享年75)が「落語はイリュージョンだ」と言っていたことが有名だが、とむは「人はどんどん変われるということだと思う。先輩を見習って、どんどんやっていきたい」と話した。

お笑いタレント末高斗夢として活躍していたが、2010年(平22)の東日本大震災で思うところがあって落語家に転身して10年。二つ目になって7年がたった。「同じお笑いでも、お笑いタレントと落語では全然違う。走る競技で短距離と長距離くらい違った」と振り返って「真打ち昇進が見えてきたので、そろそろ日本武道館を予約しようと思う」と念願の日本武道館での真打ち昇進披露を見据えた。

3歳の男児と8カ月の女児の父親。コロナ禍で仕事は減ったが、飲料の自動販売機設置、自身のブランド茶「とむ茶」の販売、給付金の申請と一家の主として家族を食べさせていくために全力投球だ。「(笑福亭)鶴瓶師匠からは『副業ばっかりするなよ』と注意されています。2年前の独演会で宙乗りを披露した時は『飛んでる暇があったら、世に羽ばたけ』、今日のイリュージョンの箱からの脱出のことを言ったら『売れない箱から出てこい』とありがたい言葉をいただきました」と話した。

コロナ禍も解消しつつあるが「実感としては、まだお客さんが戻ってきた感じはしません。落語もコンプライアンスが厳しい時代で、やりにくくなった古典もありますが、そこは工夫してやっていきたい」。真打ち昇進の念願を果たした際には、立川生志(57)に古典の「紺屋高尾」を教わる約束をしている。「近い将来に実現できたら。武道館でうちの師匠(三遊亭好楽)と一緒に宙乗りしてみたいですね、ドリカムみたいに」と笑った。