奈良出身の河瀬直美監督(52)がエグゼクティブプロデューサーを務めた日中合作映画「再会の奈良」(ポンフェイ監督)の先行上映が29日、奈良・シネマサンシャイン大和郡山で行われ、上映後、河瀬監督が舞台あいさつに登壇した。

映画は、若手監督による奈良を舞台にした映画製作を支援する「NARAtive 今と未来、奈良と世界をつなぐ映画制作プロジェクト」から誕生した。中国人の「陳ばあちゃん」が、日本に帰国させた中国残留孤児の養女を奈良に探しに来る物語。御所市が舞台となる。

河瀬監督は「奈良にこんなにうつくしい人々、街があることを世界にアピールことができる証しだと思う。感謝しています」と話した。

現在、河瀬監督は総監督を務めた東京オリンピックの公式記録映画の6月の公開に向け、編集作業を行っている。「毎日(深夜の)12時までに終わろうと思っているけど、やっぱり午前2時までとかになってしまう」と笑顔を見せ、「今回はドキュメンタリー。しかもその中で生きている人たちが、たくさんの情熱を持って、そこに存在していた夏。勝ち負けだけではなく、この人たちのささげた情熱を深掘りしている最中です」と明かした。

公式記録映画について声を詰まらせるシーンも。「次の世代が受け継ぐと思うといいかげんなことはできない。自分の言うこと、行動の1つがだれかを不幸にして、幸せにしたりする。そのことの重みを自分自身に刻みながら、みなさんとつながりたいなと思います」と思いを打ち明け、「私はこういう立場ですが、決して偉くもないし、みなさんと同じ人です」と声をつまらせた。

密着取材を受けた昨年12月に放送されたNHKのBS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」に不確かな字幕があった問題について、触れることはなかった。