西郷輝彦さんの代表作のひとつで、役者としての出世作にもなった「どてらい男(やつ)」は、劇作家花登筐さんが手がけ、少年が立身出世する様を描いた。

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西郷さん演じる主人公をいじめる番頭役だった松竹新喜劇の高田次郎(90)は21日、無念の思いとともに、収録にまつわる秘話を明かした。

主人公をいじめ抜く役柄で、両者は敵対する関係ゆえ、高田は西郷さんと「私生活でも一緒に食事とか、飲みにとか、行くのはやめよう」と、共演者としての付き合いも回避する約束で収録に入った。

当初は「1クールぐらいの期間だろうし」と思っていたが、人気シリーズと化し、「立志編」「戦後編」「激動編」「死闘編」「総決算編」として約3年半、全181回にも放送は及んだ。それでもその間、2人は約束を貫き「1回も食事に行かなかった」という。

「それでもやっぱり気遣いの人というか。最後の(収録)日に、ゴルフセットをもらいました」

主演、座長としての西郷さんの気配りに驚いた思い出を語った。

その後、20年8、9月には、3回にわたり「よみがえる名作ドラマ!『どてらい男(ヤツ)』スペシャル座談会」が放送され、西郷さんと高田が対談。「長いこと、会うてませんで、何十年ぶりにお会いさせていただきました。若いころより、ずいぶん丸くなられていたので、ご苦労の末にいい役者さんになられたんだなあと思っておりました」と、振り返った。

高田もかつて、前立腺がんを患い、克服した経緯があり、その席上で「がんのお話もしまして、同じ病気で、心配はしていたんですが…」と肩を落としていた。

 

◆西郷輝彦(さいごう・てるひこ、本名・今川盛揮=いまがわ・せいき)1947年(昭22)2月5日、鹿児島県生まれ。64年に「君だけを」で歌手デビューし、同曲と「十七才のこの胸に」で日本レコード大賞新人賞を受賞。同名映画で銀幕デビュー。66年には「星のフラメンコ」がリリースから2カ月で50万枚を売り上げる大ヒット。73年のフジテレビ系ドラマ「どてらい男」に主演し、俳優業に挑戦。デビュー30周年を迎えた94年に「別れの条件」で歌手活動を本格再開。